引き離される

「何でいるの?」


「あんたが、馬鹿な事しないようによ!ちょっと来なさい」


「嫌だよ!離して」


凛君は、手首を掴まれて引っ張られる。


「凛」


「何で?」


私の前には、拓夢が現れた。


「凛さん」


「凛君」


私と凛君は、まるで、蛇に睨まれた蛙のようだった。凛君は、母親に連れて行かれる。私は、拓夢に手を掴まれる。私と凛君の手がゆっくりと離れていく。


「凛、こっちに来な!」


そう言って、凛君は連れて行かれた。


「待って」


「凛、行くよ」


私も拓夢に連れて行かれる。まるで、不倫がバレた瞬間をシュミレーションしてるようだった。


拓夢は、私をどんどん連れて行くと部屋の前で止まった。鍵を開けて、中に入る。


「何?」


「何じゃないだろ?まさか、平田さんとセックスしてないよな?」


久しぶりに話すと思ったら、私と凛君がセックスしていないかと聞かれて私は驚いた顔をした。


「何だよ」


「私と凛君が、セックスしてようがしてなかろうが、拓夢に何の関係もない」


私は、拓夢を睨み付けて言った。


「関係ある」


「はぁー?」


拓夢は、私の言葉を無視するように私を強引に引き寄せて抱き締めてくる。


「離して」


「離さない」


暴れる腕をしっかりと押さえ込まれて、さらにギュッと抱き締められる。


「誰でもいいのに…やめてよ」


「誰でもよくない!俺は、凛以外と出来ないんだ」


「嘘だよ!嘘!あの女の人の声は?美紗さんじゃなかったよね?」


「あれは、明日花ちゃんだった。美紗や明日花ちゃんとしようとしたのは認める。だけど、出来なかった。うまく、機能しなかったんだ」


「そんな言葉信じれるわけない」


「じゃあ、二人に電話して聞いていいから!」


「そこまで、する必要ない」


「してよ」


「何で?」


「愛してるんだよ、凛」


その言葉に、体の奥からボコッと何かが沸き上がったのを感じる。拓夢は、大人しくなったのを感じたのか私を離してくれる。


「電話!管理人さんが来てたから、出れなかった。何かあったんだろ?」


拓夢に顔を覗き込まれる。涙が込み上げてくる。


「何もない」


「嘘つかなくていいから」


頭をポンポンと優しく撫でられる。涙がどんどん奥から沸き上がってくるのを感じる。ポタリと頬を濡らす涙を拓夢は、長い指先で拭ってくれる。


「凛、泣かないで」


頬に手を当てられて、拓夢の顔に引き寄せられる。


「今日は、約束なの!凛君と…」


「まっつんの話、聞いたんだろ?」


その言葉に、私は何も答えられずに目をそらそうとした瞬間。唇が重なった。凛君と違って、どうすればいいかわかってるキス……。

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