ホテル…

一件のホテルの前で停まった。


「駐車場に停めないとね」


そう言って、平田さんの母親は近くのコインパーキングをスマホで探してから車を出した。コインパーキングに車を停めると俺にスマホを見せてきた。


「ほらこれ、今日の日付が入ってる」


「誰が、こんなのを?」


「それをあんたに教えるつもりはない」


そう言って、平田さんの母親は、俺からスマホを取り上げた。


「何故?直接、ここに来なかったんですか?いるのわかってたなら…」


「今日、お昼からバイトだと思ってたから…」


その言葉に俺は、時計を見る。そうか、一時前だから平田さんの母親は待っていたのだとわかった。


「乗り込んで、止めようと?」


「そんなの出来ないわよ!何号室にいるのかわからないんだから」


そう言って、平田さんの母親は頭を抱える。


「どうするんですか?」


「あんたが、どうにかしなさいよ」


「俺がですか?」


「決まってんでしょ!あの女を止めなさいよ」


「凛は、平田さんとどうにかなったりしませんよ」


「信じてんのね…」


平田さんの母親は、そう言うと車の窓を開ける。


「煙草、吸っていい?」


「どうぞ」


カチッと煙草に火をつける。


「フー、でもわからないでしょ?今は、あんたといない。だから、何が起こるかわからないでしょ」


その言葉に、急に不安が襲ってきた。あの日、平田さんにキスをされて凛は…。


「兎に角、ホテル行きましょう」


俺は、平田さんの母親にそう言った。


「いいけど!部屋番号は、知らないわよ」


「ですよね」


俺は、スマホを取り出してさっきのホテルを調べる。どうやら、晩御飯は部屋食ではないらしい。一ヶ所で、食べるスタイルだ。それなら…。


「もしかしたら、泊まれば会えるかもしれないです」


俺は、スマホを平田さんの母親に見せる。平田さんの母親は、煙草を消した。


「いいよ!あんたと泊まるよ」


そう言って、笑ってくれた。


「じゃあ、行きましょう」


俺と平田さんの母親は車から降りる。平田さんの母親に教えてる人物はいったい誰なんだろうか?


ホテルについて、俺と平田さんの母親はフロントで受付をして、鍵を渡される。エレベーターに乗って、部屋に入る。


「なかなか、いいホテルね」


そう言って、窓の外を見つめている。


「あんた、お昼食べた?」


「朝から、何も食べてません」


「何か、食べに行こうか!晩御飯まで、時間あるし」


「はい」


俺は、平田さんの母親と部屋を出る。鍵をフロントに預けて歩く。


「ここ真っ直ぐ行ったら飲食店があるって!何食べたい?」


「何でもいいです」


「私、これ気になるんだけど!駄目かな?」


「いいですよ」


思っていたより、平田さんの母親は話しやすい人で凄く驚いていた。

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