すれ違い…

「色々あるんですね」


「そうみたいだね」


そう言いながら、歩いて行く。食べたいものって何なのだろうか?平田さんの母親に後ろからついていく。凛がもし平田さんとそうなったら…。俺は、どうすればいい?


「うどん屋さんもあるんだ!」


「食べたいですか?」


「いや、これが一番行きたい」


そう言って笑ってくる。


うどん屋の前を通りすぎる。うん?今、聞いた事がある声が聞こえた気がした。俺は、振り返った。でも、そこには誰もいなかった。


「早く!行くよ」


「はい」


そう言われて、俺は平田さんの母親の隣に並んだ。


「あんたは、何で不倫してるの?」


「別に、たいした理由はないですよ!ただ、惹かれ合っただけです」


「バレたら、終わるんだよ」


「わかってます」


「それは、あんたもあっちも…」


「はい」


平田さんの母親は、俺の言葉に首を横に振っておでこに手を当てる。


「わかってても、やめられないのが不倫なのかもね」


そう言って、一件の店の前に止まる。外観だけで美味しそうな洋食屋さんだった。


「ここでも、いい?」


「はい」


俺は、そう言ってついていく。店の中に入ると、カラフルな飾り付けがされている。


「昔ね、凛と夫と食べに行った事があるお店だった。なくなったと思ってたんだけど、ここにうつってたみたい」


そう言って、メニューを見てる。俺もメニューを見つめる。


「いらっしゃいませ!ご注文おきまりでしょうか?」


お冷を持ってきた店員さんが、そう話す。


「このハンバーグスペシャルランチ下さい」


「ライスかパンが選べますが…」


「ライスで」


「かしこまりました」


「俺は、このチキンスペシャルランチ」


「ライスかパンか選べますが…」


「ライスで」


「かしこまりました。ご注文繰り返させていただきます。ハンバーグスペシャルランチのライスが一つとチキンスペシャルランチのライスが一つですね」


「はい」


店員さんは、頭を下げていなくなった。


「あんた」


「あの、俺、星村拓夢です」


さっきから、あんた、あんたと言われると怒られてるみたいで、俺は平田さんの母親に自己紹介をしていた。


「あー、ごめん。星村さんは、彼女を愛してるの?」


「はい、愛してます」


「旦那さんから、奪いたいぐらい?」


「それは…。ないと言えば嘘になりますよね!でも、俺は彼女が悲しむ姿は見たくないです。彼女が、旦那さんと別れて悲しむなら…。俺は、不倫じゃなくて傍にいる方法を探します」


「へー。しっかりしてるんだね」


平田さんの母親は、そう言ってお冷を飲んでいる。

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