会いたくなかった…
「あっ…」
「あれ?たくむんと一緒なら言ってよー」
理沙ちゃんに会うと思わなかった。私は、軽く動揺していた。
「えっと、あの」
「いいよ!二人の邪魔しないから」
「ありがとう」
「だけど、後で!少し喋ろうね」
「わかった」
「じゃあねー」
理沙ちゃんは、そう言ってトイレに入っていった。私は、手を洗って急ぎ足でトイレから出て席に戻った。席につくと、凛君はご飯を食べていた。
「先、食べてたよ」
「うん」
「凛さんの、ケーキもきたよ」
「うん」
「どうしたの?顔色青いよ」
「大丈夫」
凛君が頼んで食べてるチーズハンバーグの美味しそうな匂いが、さっき拓夢と二人で食べた晩御飯を思い出させる。
私は、アイスミルクティーにガムシロップを注ぐ。
「凛さん、糖尿病になっちゃうよ?」
凛君に止められて、我に返った。
「本当だ」
蓋をあけると半分も注いでいたようだった。
「大丈夫?ボッーとして」
「大丈夫」
凛君に心配かけてどうするのよ!私は、頭の中で必死に考える。どうする?どうする?どうする?ミルクティーをゴクリと飲む。
「あまっ!!」
「そうだよね」
「うん、甘過ぎる」
「飲めないぐらい?」
「だ、大丈夫」
私は、苦笑いを浮かべて笑った。
「無理しないで」
「うん」
あっ!いいことを思い付いた。早く食べて、早く出ればいいんだ!
「凛君、それ食べたら別の場所に行こうか?」
「えっ!いいけど…。食後にパフェ頼んだんだけど!」
「パフェ?それは、キャンセルで」
「でも、せっかくなら食べたいし」
「このケーキあげるから」
「チーズケーキだけは、苦手なんだよ」
「お願い、凛君」
「理由は?」
「えっ?」
「ここから、帰らなきゃいけない理由は?何?」
「それは…」
そうだよね!そんな理由ないよね!だって、今理沙ちゃんに会っただけで彼氏のまっつんさんが拓夢に連絡するか何て決まった事じゃない。
「ゆっくりしよう」
「うん」
人間には、第六感ってのがあるのを私は忘れていた。あの時、早く帰らなきゃいけないって思った気持ちに従っておけばよかった。あの日の病院だって、私は行きたくなかった。雪乃との食事だって…。今まで、直感に逆らった場合に私はハズレを引いてばかりだった。なのに、目の前にいる凛君に流されてしまった。凛君は、ご飯を食べ終わった。店員さんが、やってきて、お皿を下げる。私は、ようやくチーズケーキに手をつけた。でも、ずっと何かが引っ掛かっていた。
「ちょっと、トイレ行ってくる」
「うん」
だから、またトイレに行った。
「一緒にいるの、拓夢じゃないんだな」
「ごめんなさい」
まっつんさんとたまたまトイレに行く道で会ってしまった。
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