ミゼリア

ホームに降りて歩きだす。拓夢となら、手を繋いでるであろうその距離を私と凛君は並んで歩く。


「何か、お腹すいちゃった」


「何か、食べていいよ!晩御飯は?」


「いつもは、お母さんが500円くれたりお弁当作ってくれるんだけど…。ほら、いつ帰ってきていいって言ってくれるかわからないから…。少しでも、お金を置いとこうと思ったらパン一つしか食べれなかった」


凛君は、小さな溜め息を吐いた。


「お腹すいてるでしょ?食べたらいいよ!」


「ありがとう」


凛君は、お腹に手を当てている。


改札を抜けると、【ミゼリア】と書かれた看板が目につく。


「ここ、結構美味しいんだよ!来たことある?」


「こっちじゃなくて、家の近くのなら」


「そうだよね!チェーン店だからね」


「そうだね」


そう言って、凛君はニコニコ笑う。【ミゼリア】の店の前について、私と凛君は、【ミゼリア】に入る。


「いらっしゃいませー」


店員の女の人が現れた。


「何名様ですか?」


「ふたりです」


「二名様ですね!こちらにどうぞ」


「あっ、あの、奥がいいです」


案内されようとした席を凛君は、断った。


「かしこまりました」


凛君が、奥と言った場所にやってきた。


「ご注文お決まりになりましたら、お呼び下さい」


そう言って、店員さんはお冷やとおしぼりを置いていなくなった。


「ここね、他の席と違って周りから見えないから」


確かに、高さがある造りのソファー席は、周囲からは、見えなさそうだった。


「凛さん、さっきから周りを気にしてるでしょ?」


「あっ、ごめんね」


「いいの、いいの!気にしないでよ」


凛君は、そう言いながらメニューを見つめている。


すぐに、凛君はピンポーンと呼び出しボタンを押した。店員さんが、やってきて凛君は注文している。


「はい」


「チーズケーキとアイスミルクティーで」


「セットにしますか?」


「はい、それで」


「かしこまりました」


そう言って、店員さんはいなくなった。


「凛さん、甘いの好きなの?」


「そう言うわけじゃないかな?」


「何か、デートみたいで楽しいな!」


凛君の無邪気な言葉に、胸がチクリと痛みだした。


「お手洗い行ってくる」


「うん!いってらっしゃい」


凛君は、そう言って笑って手を振ってくれる。


私は、トイレにやってきた。拓夢と何度も何度も約束を交わしたのに、今になって不安で仕方がなかった。どうしよう…。


でも、拓夢の家から二駅も離れているし。拓夢が、来るわけないよね。大丈夫、大丈夫!私は、何度か深呼吸をしてトイレから出る。


「あー、凛ちゃん」


私は、その声に固まってしまった。

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