凛の話7
それは…。
拓夢と恥ずかしい事をした。立ち上がった時にワンピースが透けてるのに気づいていた。拓夢は、さりげなく上着を渡してくれる。やっぱり、俺様より王子様の方が似合うよ!
立ち上がって、並んで歩く。手を繋いでくれる。不倫ってもっとコソコソしてるものだと思っていた。だから、不思議…。
ただのカップルみたいにしてるから、時々勘違いする。私と拓夢は、イケナイ関係じゃないんじゃないかって!
拓夢から、今日も一緒にいたいと言われた。本当は、凄く嬉しかった。
でも、凛君を拓夢の家に連れてくの?
いやいや!そんなの出来るわけないじゃない。葛藤したら、「うん」って言えなかった。
それどころか、とんでもなく困った顔をしてしまったのが自分でもわかっていた。
何故か、駅で拓夢はお別れをしてきた。どうして?同じ電車に乗るのに?拓夢は、二駅先で降りるじゃない。そう思っていても聞けなくて、私は改札口を抜けた。
ホームにつくと、電車がやってきていた。龍ちゃんとだったら、「やったー!今日は、いい事あるかもよー」なんてはしゃいでただろうなー。
私は、電車に乗り込んだ。一駅先で降りる。電車を降りて改札に向かいながら考えていた。
期待させて、優しくして、突き放しちゃうなら凛君を放っておくのが正解だったんだと思う。
だけど、どうしても、私は凛君の力になりたかった。だって、目の前で、凛君はお母さんじゃなくて私を庇ったんだ。お母さんにあんな酷い事言って…。本当は、きっと凛君だって辛かったはずだから…。そう思うと、凛君を放っておく事は私には出来なかった。
でも、拓夢に嘘をついちゃった。本当の事しか今まで言ってなかったのにー。
「あー」
「ママ!怖いよー」
「大丈夫、大丈夫」
モヤモヤしすぎて、駅前で叫んでしまった。私は、母親の怪訝な眼差しに目を伏せてお辞儀をした。いきなり、おばさんが叫んだら怖いよね。
恥ずかしくなってきたから、急ぎ足で歩いた。私は、急いで家に帰ってきた。
「皆月さん、ちょっといいかしら?」
「あっ、はい」
隣人の坂東さんに声をかけられた。
「最近ねー。カラスにゴミステーションが荒らされてね」
「はい」
「だから、生ゴミは見えないようにしてもらえると助かるの」
「はい、わかりました」
「皆月さん、デートだった?」
「えっ?」
「何てね!旦那さん、出張行ったのに、デート何てしないわよねー」
「あっ、はい」
「二つ向こうの筋の近藤さんが、不倫で離婚したから心配になったのよ!おたくも子なしでしょ?あちらは、子供は巣だってたけど!ごめんなさいね、よけいなお世話ね」
「い、いえ」
「でも、そんな綺麗なワンピース着てたら勘違いされちゃうわよ!あらやだ!買い物行かなきゃ!じゃあ、生ゴミの事よろしくね」
「はい、わかりました」
坂東さんは、ニコニコ笑いながらいなくなって私は、家の鍵を開けて家に入った。
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