泣いていいんだよ

私は、凛君のペットボトルを持ってくれてる手を握りしめた。


「凛君」


「つまらなかったよね!ごめん」


「違う、そうじゃなくて」


「じゃあ、何?」


「泣いていいんだよ!凛君」


凛君は、私の頬に当ててるペットボトルをのけて私の重ねていた手もはずされる。


「もう、温いよね!氷買った方がいいかも。まだ、赤いから」


頬に直接、手を当てられる。凛君の手は、まだ少しだけ冷たい。


「話をそらさないで!凛君」


「別に、そらしてなんかいないよ」


「凛君、無理して大人になろうとしなくていいんだよ」


「なってないよ」


「なってるでしょ?お父さんがいなくなって、お母さん守らなきゃって思ったんじゃない?その為に、泣くのも我慢してたんじゃない?」


凛君は、私の頬を優しく撫でてくれる。


「何で、凛さんが泣くの?もっと、好きになっちゃうじゃん」


凛君が、滲んでくのを感じる。


「わからないけど、悲しい」


私の言葉に、凛君は私を引き寄せて抱き締めてくる。


「凛さん!本当は、僕ね。」


「うん」


「父さんとあの人を選びたかったんだ」


「うん」


「父さんが大好きだったから」


「うん」


「母さんよりも、大好きだったから」


「うん」


「こんな気持ち持っていたらいけないって思ってたんだ」


「うん」


「だって、僕しか母さんの傍にいれないから」


「うん」


「だけどね…凛さん…」


凛君の声が鼻にかかったように変わる。凛君が泣いてるのがわかる。


「僕ね」


「うん」


「本当はね」


口に出すのを躊躇っているようで、凛君は細切れにしながら話してる。


「うん」


「本当は…」


「うん」


「僕は、父さんについて行きたかったんだ」


凛君は、せきをきったように泣き出した。


「いっぱい泣いていいんだよ!凛君」


私は、凛君の背中を擦った。


「凛さん、お願いがあるんだけど…」


「何?」


「父さんに会いに行くのについてきてくれないかな?」


「私が?」


「うん。一人じゃ勇気なくて」


凛君は、私から離れる。


「お父さんから、連絡がきたの?」


「うん!学校に手紙が届いたって、先生に言われて」


「学校に?」


「家に送ると捨てられるからって」


「そうなんだね」


「うん!渡したいものがあるから、会いたいって言われたんだ。でも、勇気がなくて…」


「も、もしかして、それで…」


「童貞捨てて、大人になったら勇気湧くかなーって、思って!頭悪いよね、僕」


「ううん、何かわかるよ。その気持ち」


「本当に?」


「うん」


「会いに行ったら、母さんを裏切るかなって思って…。でも、また今日あんな風に言われて…。僕は、産まれない方がよかったのかな?」


そう言うと、凛君の目から、ボトボトと音がしそうな程の大粒の涙が流れてきた。ずっと、凛君はお母さんにあんな風に言われてたのがわかる。


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