ごめんね
「凛さん、大丈夫?ごめんね、母さんが…」
「ううん。私こそお母さんを叩いちゃって、ごめんね」
凛君は、私の手を握りしめてきた。
「嬉しかったよ!僕は…。いつも、ああやって言われてたから!今日が初めてじゃないし」
「それって、虐待でしょ?」
「言葉ぐらいで、虐待にはならないんじゃない?凛さん、大袈裟だよ!僕、水買ってくるよ!外の自販機で!」
そう言って、凛君は私の頬に触れる。ジンジンと熱を持ってるのを感じる。
「冷やさないと」
そう言って、凛君は走って行ってしまった。苦手だと思っていたけど、凛君には凛君の事情があったんだね。
「鍵をかけた昨日を♪手放してしまおう♪そして、目の前の扉を開こう♪素敵な
突然、歌声が聞こえてくる。誰?この歌…昨日、拓夢達が歌ってた。
この公園は、昼間でも薄暗くて…。
「凛君……?」
歌声が止まって、目の前に人が現れた。
「あんたの事、ずっと見てたよー」
そう言って、女の人が近づいてきた。
「誰ですか?」
「誰?拓夢を裏切ってよくそんな事が言えるな」
飛び出しそうな程に、見開かれた目が私を睨み付ける。
「裏切ってないです」
「はぁ?もっぺんいってみろよ」
「裏切ってなどいません」
「よく言うな!不倫してるくせに」
その言葉に、胸が締め付けられる。何で、この人が私と拓夢の関係を知っているのだろうか?
「ほら、ほらほら!この靴!昨日、見たよ」
その言葉に、背筋が凍りつくのを感じた。この人、昨日の扉を叩いていた人だ。怖い!この人、めちゃくちゃ怖い。
「誰だよ、あんた!」
凛君が、走ってやってきてくれた。暫くして、拓夢も現れて…。美沙さんを追いかけて行ってしまった。私は、その場に崩れ落ちそうになる。
「大丈夫?」
凛君が支えてくれる。
「ベンチに座ろう」
「うん」
拓夢が彼女を追いかけた時、ここがチクッとしたのを感じた。
「大丈夫?」
凛君は、買ってきたお水を私の頬に当ててくれる。まだ、少しだけひんやりとしていた。
「凛さんは、彼の事が好きなんだね」
「好き…。だけど、きっと」
「それは、イケナイ気持ちって事?」
私の目から涙が流れてくる。
「別にいいと思う」
父親が不倫していたと言われていた凛君は、私を
許してくれた。
「どうして?許してくれるの?」
凛君は、私の言葉に眉毛をあげて見つめて話す。
「僕ね、父さんが不倫して出て行ったんだ!9歳の時に…」
「うん」
「凄く、優しい女の人だった。父さんも幸せそうだった」
「うん」
「凛、一緒に行くか?って言われたんだけどね!さすがに、僕はあの中に入れなかったんだ」
そう言って、凛君は悲しそうに笑って話してる。今にも、消えちゃいそう。本当は、辛かったんだ。
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