価値がないなんて…

拓夢は、私の顔を覗き込んでくる。


「凛、自分を責めないで」


「拓夢」


「女性としての価値って!若さと子供を産むことだけなのかな?そう言うのって俺は、何か古くさいって思うよ」


「古い?」


拓夢は、そう言うと私の手をひいてソファーに連れてくる。


「時代は、令和だよ!何か、凛の考え方ってザ昭和って感じだけど」


「昭和だし」


「それは、産まれた時だろ?凛が生きてきたのは、俺と同じ平成だろ?」


「そうだけど」


「凛、古いよ!その考え方」


「古いの…」


拓夢は、私の頬を優しく撫でてくれる。


「古い。だって、今は何だって選べる時代だから!恋愛だって、結婚だって、子供だって」


「選べる時代って何?」


「自分が、本当に欲しいものを選べるんだよ!性別関係なく恋愛だって出来るんだ。結婚だって、無理にする必要だってない。子供だって、皆が産む必要ないんだよ!好きな事やものを選べる時代なんだから、古くさい固執した考え方はやめていいんだよ」


拓夢は、私の頭を撫でてくれる。


「私の頭の中、頑固ジジイって事だね」


拓夢は、その言葉に笑った。


「確かに!こんなに女の人なのに、中身はくそジジイって呼ばれるやつだな」


「何よ、それ」


「仕方ないんじゃない?だって、凛の両親は、そうだって思って育ってきたんだろ?女性の幸せは、結婚と出産だー!若くない女は、無価値だーって」


「そうなのかな?」


「そうなんじゃない?だって、実際問題!女や男がってわけなくなったのは、ここ数年だし。今だって、男尊女卑ってやつなくなってないだろ?俺の職場でも上司が言ってるよ!女が偉そうに指図すんじゃねーとか」


「やっぱり、女性が働き続けるのって大変なんだよね」


「それは、そうだろうな!だって、トップは昭和の頑固ジジイなわけだろ?まだまだ、変わるのは難しいよ」


「だから、選ぶって事?」


拓夢は、私の言葉に頷いた。


「それに、何でも選べる時代だろ?スマホ一つで、衣食住何でも揃えられちゃうわけだし」


「確かに!ポチポチだもんね!わざわざ行かなくてもよくて、便利だよねー」


「だけど、いい事ばっかりじゃないだろ?何でも手に入るって錯覚させるだろ?こいつはさ」


そう言って、拓夢はスマホをテーブルに置いた。


「何でも手に入るから、手に入らなかったら余計に苦しむんだろ?凛が言う価値がないって話しもこいつが余計に苦しめてるんじゃないのかな?」


そう言って、拓夢はスマホを私に見せる。


「便利なツールも、一歩間違えば苦しみを生むだけなんだね」


私は、拓夢のスマホを指で触って言った。

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