幸せな時間…
「つうか、どっか旅行行くの?」
かねやんは、俺のボストンバックとスーツを指差した。
「これは、違うんだ」
俺は、みんなにさっきの出来事を話していた。
「まぁ、兎に角。二人座りなよ」
そう言われて、座らされる。
「何、飲む?理沙が、とってくるよ!凛ちゃん」
理沙ちゃんは、凛にベッタリとくっついた。
「すみません。理沙、一人っ子で!凛さん、お姉ちゃんみたいに思ってるんですよ」
「私、おばさんですよ」
凛がそう言ったら、理沙ちゃんは凛を覗き込んだ。
「どこが?どこが?おばさん?」
理沙ちゃんは、そう言って凛の事をまじまじと見つめる。
「39歳だから…。私」
凛の言葉に、理沙ちゃんは大きな声で叫んだ!
「えぇー!!マジで、言ってる?全然見えないんだけど」
「お世辞でも嬉しい」
「お世辞なんか、理沙言えないよ!優太、理沙お世辞なんか言えないよね」
「言えないな」
「ってか、39歳とか!嘘だよ!全然見えない!」
凛は、照れ臭そうに笑ってる。
「理沙より16歳も上なの?本気で言ってる?本気?」
その言葉に凛は、財布から免許証を取り出して見せてる。
「えぇー!ほんとじゃん!凄い、ビックリなんだけど!何で?何で?そんなに若いの?」
「ちゃんと奥さんしてないからかな…」
凛は、悲しそうに目を伏せてる。
「ちゃんとって何?」
「理沙、事情あるんだろ」
「だって、バカだから理沙わかんないよ」
「赤ちゃんいないから」
凛が、泣きそうになって俯いて小さくなってく、俺は凛の手をそっと握りしめる。
「赤ちゃんいないとちゃんとしてないの?」
理沙ちゃんの言葉に、凛は俯いた顔をあげる。
「理沙、もうやめろって」
「だから、何でって」
「デリケートな問題だろ?」
「みんなそうやって触れないようにするのが優しさだって思ってるなら理沙は違うと思う」
凛は、その言葉に理沙ちゃんをジッと見つめてる。
「そんな風にするから、凛ちゃんが悲しくなるんだよ!凛ちゃんが自分を駄目な人みたいに思っちゃうんだよ」
「どういう意味?」
凛の言葉に、理沙ちゃんは凛の反対の手を握りしめた。
「私のお母さんも、二人目不妊だったんだって!私の下につくってあげたかったけど、何しても妊娠出来なかったって!親戚はね、好き勝手言ってね。友達にも言われたって!お父さん以外こうやって言ってくれなかったって」
そう言うと、理沙ちゃんは凛の頭を優しく撫でる。
「生きていてくれてるだけで、充分だよ!凛ちゃんは、もう充分過ぎるぐらい頑張ったんだよ!だから、もう苦しまなくていいんだよ」
凛は、その言葉に泣いていた。
「凛ちゃんはね!価値がない人じゃないよ!こんなに素敵な人だから、凛ちゃんには赤ちゃんは必要ないって神様が決めちゃったんだよ!だから、凛ちゃんは何も悪くないよ」
理沙ちゃんは、そう言ってニコニコ笑って凛を見つめていた。
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