崩壊する…

ガチャン、ダン、ダン…


もの凄い音が、響き渡ったと思ったら静かになった。


「さっきから、うるさいって通報がありましてね」


響き渡る声に、俺は凛と顔を見合わせた。


「もしかして、警察?」


「誰かが呼んだのかも、知れない」


その声が、聞こえた瞬間音は静かになった。俺と凛は、暫く洗面所に隠れていた。ホッとして、腰が抜けた。


「よかった」


「ほんとだね」


ピンポーン


また、インターホンが鳴った。俺は、固まった。


「星村さん、おられますか?」


男の人の声だった。


「開けるよ」


「うん」


俺は、玄関に向かって鍵を開ける。


「はい」


「警察です」


「はい」


「先ほどまで、おられた女性が星村さんの彼女だとおっしゃっているんですが…」


「元カノです」


「そうですか」


警察の人は、何かを考え込んでから息を吐きながらこう言った。


「よろしければ、届け出を出しに来て下さい」


それ以上言わずに、頭を下げていなくなった。俺は、その人がいなくなった後、外に出る。バールのようなものが落ちていたり、ドアにはかなりの凹みがあった。元カノだから、あれしか言えなかったのがわかった。


「拓夢、大丈夫?」


凛が、玄関にやってきていた。


「珈琲飲みに行きたいから、ついてきてくれないか?」


俺は、うまく笑えなかった。玄関に入ると凛は、抱き締めてくれる。


「元カノって言っちゃった。美沙を他人みたいに言っちゃった。昨日、彼女とセックスしたのに」


俺は、玄関で膝から崩れ落ちた。


「だって、怖かったんだ!どうしようもなく怖くて怖くて堪らなかったんだ。また、来たらと思ったら頭がおかしくなりそうだったんだ。凛、俺、最低だよな…」


「ううん。誰だって怖いよ!拓夢だけじゃない。私だって、そう言うよ」


凛の優しさが胸を締め付けてくる。


「凛。あー、あー、あー」


頭を抱えながら土下座するみたいに、俺は泣き崩れる。


「大丈夫、拓夢は悪くないよ」


愛した人を警察に渡してしまった。


「あー、あー、ごめんなさい、ごめんなさい、あああ」


「大丈夫、大丈夫だよ」


凛は、俺の背中を擦ってくれてる。


ガタン…。その音に、ビクッとして俺は振り返った。たった一回で、こんなにも恐怖が体に染み付いてる。


「拓夢の家じゃないよ」


「凛、怖い、怖い」


俺は、歯をガタガタ鳴らしながら凛にしがみついた。松永先輩が、自殺しようとした気持ちがわかる。怖くて、怖くて、堪らない。凛がいなかったら、俺だって…。


「大丈夫、今日は、ずっと一緒にいるから」


そう言って、凛が抱き締めてくれる。


「ホテル行こう」


「うん」


「用意するから」


「うん」


俺は、そう言ってふらふらしながら立ち上がった。この家には、いれない。この家には…。

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