もう、会わない
私は、従姉妹にもう二度と会わないと誓った。
「凛、お風呂沸いたみたいだから」
龍ちゃんの言葉に、私は現実に引き戻された。
「叔父さんの法事は、二度と行かないから」
「ごめん!嫌な事思い出した?」
龍ちゃんは、私の顔を覗き込む。あの日みたいに私の握りしめた拳が震えてる。龍ちゃんは、その手をそっと両手で包み込んだ。
「ごめんね。あんな言われ方」
「凛のせいじゃないだろ?」
「だけど、従姉妹だから」
「従姉妹だけど、凛とは違うだろ?」
「うん」
「あの日みたいに、怒りを抱えなくていいんだよ」
「うん」
「もしかしたら、凛の両親も傷ついたのかもしれないね」
「うん」
「子供がいないだけで、人間としての価値を下げられる。よくある話の一つだね」
「私達は、価値がないの?」
「動物としてなら、そうなんじゃないかな?子孫繁栄は、本能だろ?だったら、価値がないと思われても仕方ない事なのかもな」
私は、龍ちゃんの涙を拭うけど、拭っても、拭っても、溢れてくる。自分自身を価値がない生き物だ何て認めたくないよね。
「動物としての本能より、私と居てくれてありがとう」
私の言葉に、龍ちゃんはハッとした顔をした。
「どうしたの?」
「俺達は、人間に進化したから赤ちゃんいないんだよ!」
「何それ?」
「動物的な本能が消えて人間に進化したんだよ!だから、子供がいない!そう思わないと…。生きれないだろ?凛」
「私と龍ちゃんは、動物をやめちゃったって事?」
「そう!動物をやめて、人間に進化したって事!だから、もう俺達はおしまい」
「おしまい?」
「そう!もう、今回で終わり!次は、生まれ変わらない」
「龍ちゃん、それ何?急にオカルト?」
龍ちゃんは、私の頬を濡らす涙を拭ってくれる。
「もう、動物として学ぶ事はなくなったって事!未練を残さず死になさいって事だよ」
「オカルトでしょ?」
私が泣きながら笑ったら、龍ちゃんはニコッて笑ってくれた。
「オカルト」
「何で、そんな話、急にするの?」
「そう思わなきゃ!価値ないって思っちゃうから!今、そうやって言っただけで…。何か、ここが凄い楽になって笑えた」
その言葉通り、龍ちゃんの涙は不思議と止まっていた。
「じゃあ、私と龍ちゃんは、進化したんだね!」
「そうそう!」
「龍ちゃん、ありがとう」
「こっちこそ、ありがとう」
「お風呂、入ってきなよ」
「あっ、本当だ!入ってくるよ」
そう言って、龍ちゃんは頭を撫でてくれる。私は、龍ちゃんがお風呂に向かったのを見てから…。充電してるスマホを取り出した。人間に進化したって思うのは、自由だよね。そう思わなくちゃ、龍ちゃんはずっと息が出来なかったんだ。
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