向き合わなきゃ…

スマホの電源を入れると

ブー、ブー、ブーって、バイブレーションを鳴らしながらメッセージが受信されてきた。


「凄い、量…」


凛君からの【会いたい】と言うメッセージが30通もやってきていた。

もう一度会って、きちんと話すしかないかな…。

私は、【わかった】と返事をした。


ブー、ブー、ブー


「はい」


『凛さん、よかった』


凛君が、ずっとスマホを眺めていたのがわかった。


「ごめんね、電源入れてなかったから…」


『ううん。もう、返事くれないと思ったから…』


図星だった。このまま、出来ることならフェードアウトしたかった。でも、16歳の男の子に39歳の既婚女がする事じゃない。


「また、行ける日。連絡するから」


『いつ?』


「今すぐには、答えられない」


『そうだよね』


「ごめんね」


『ううん、いいんだ』


「今日は、主人がいるから…。切るね」


『明日は?話せる?旦那さん、いない時間とかある?』


「まだ、わからない」


『そうだよね!ごめん』


「ごめんね」


『ううん、じゃあ。またメッセージして!俺、凛さんに会えるの楽しみにしてるから』


「わかった」


『約束だよ?』


「うん、じゃあね」


『バイバイ』


電話を切って、私は大きな溜め息を吐いた。凛君、同い年に興味持った方がいいよ。こんなおばさんに、あんなキラキラした声だして…。私が、凛君の母親なら発狂すると思う。

私は、スマホを見つめる。


【凛、会いたい】


拓夢からのメッセージがきてた。


【何も言わずに抱き締めさせてくれないかな?】


【凛、身体の関係がなくなっても…。俺を捨てないで】


拓夢が、何かに苦しんでいるのがわかる。


【明日、何時に行けばいい?】


私は、メッセージを送信した。拓夢は、凛君とは違ってスマホを持っていないようだった。


「そのうち、返事くるかな」


私は、スマホでSNSを見つめる。めぐちゃんが、新しい投稿をしていた。嫌な気持ちになったのに、見てしまう。【子供がいる主婦が一番偉いから!子育てが一番大変!それ経験してない人って人間的に駄目な大人よ】何だ、この投稿は…。

友達も同類のお馬鹿しかいないのか、【わかる】【言えてる】【子なしの頭ん中、中二過ぎて笑える】などと書かれていて吐き気がする。私は、スマホを伏せた。

昔は、めぐちゃんが大好きだった。だけど、今は世界で一番大嫌いだ。


「凛、大丈夫?」


お風呂から上がってきた龍ちゃんが私に話しかけた。


「龍ちゃん」


私は、龍ちゃんに抱きついた。湯タンポみたいに暖かい。


「喉乾いたから、水飲みたいよー」


そう言って、私を抱きしめたままキッチンに歩いていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る