5年前ー②

一輝君が言うみんなが、誰なのかわからなかった。この会場にいる親戚達に、そう思われてるのではないかと思うだけで胃が捻れそうな程に痛くなってきた。


「凛、まだ時間あるから少しでようか?」


「うん」


龍ちゃんの言葉に救われた。そとに出ると龍ちゃんは、私の手を引いてどこかに連れて行く。


「龍ちゃん、どこ行くの?」


「コンビニ」


「どうして?」


「ATMだよ」


「何で?三万だねって話してたよね?」


「少ない」


「龍ちゃん」


「あんな風に言われたんだ!俺にだって、意地があるんだよ」


「龍ちゃん」


そう言って、龍ちゃんはATMから追加で7万を引き出していた。

私には、龍ちゃんの気持ちが痛い程わかったよ。誰に言われたのかわからないから…。あの場所にいるのも嫌な事もわかってる。


「凛の両親が来れないのわかってるから、ちゃんと最後まで居なきゃな」


龍ちゃんは、そう言って笑うけど…。笑顔は、ぎこちなかった。

何故か、私の両親は叔父のお通夜にやって来て…。今朝、ぎっくり腰になった事を連絡されたのだった。両親共にだと連絡がきた。なので、申し訳ないけれどお願いしますと言われたのだ。もしかすると、昨日娘が可哀想な人だと聞かされたのではないだろうか?


「もどろうか?」


「うん」


私と龍ちゃんは、戻った。私は、お葬式が始まり焼香をする時に叔父を睨み付けていた。【あんたが死んだせいで!私は、こんな思いをしなくちゃいけなくなったんだ!】って、心の中で叫んでやった。

涙が流れてくるけど、叔父がいなくなって悲しいのか、悔しくて泣いてるのか、全く区別がつかなかった。


お葬式が終わって、私と龍ちゃんは、ホッとしていた。叔母さんは、何度も頭を下げて「ありがとう、凛ちゃん」と繰り返した。


「凛ちゃん」


もう会いたくなかったのに、めぐちゃんに呼び止められた。


「何?」


「ほらー。翔太、抱いてあげてくれない」


一歳の男の子を抱かされた。


「全然、会えなかったから!オモチャ券だけじゃ寂しいじゃない。会いに来てくれないなんて!」


「ごめん、忙しくて」


わざと抱かされたのを感じた。あんたには、手に入らないのよ!そう、めぐちゃんの顔が言っていた。


「あー、ワアーン」


「やっぱり、子供がいない人間がわかるのね」


そう言って、笑って翔太君を抱き締めた。


「次は、凛ちゃんの赤ちゃん。抱かせてね」


ニコニコ笑った顔に、初めて人を殴りたいと思った。


「じゃあね」


私と龍ちゃんは、家に帰った。悔しくて悲しくて泣き続ける私に、龍ちゃんは「大丈夫」を繰り返してくれた。

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