愛って何?【カクヨム版】


「洗ってきたよ!凛」


「じゃあ、私も洗ってくる」


「いいよ!別に、凛は…」


「駄目」


「わかった」


私は、龍ちゃんから逃げるようにお風呂場に来た。したくないわけじゃない。頭を流れる言葉を書き消せるのかわからなくて辛いだけ…。

私は、溢れてくる涙を拭ってシャワーで体を洗った。拒否すればおかしい。それは、間違ってる。だから…。

シャワーを浴びて、体を拭いて楽チンなワンピースを着た。


「ごめんね、龍ちゃん」


寝室にやってきたら、龍ちゃんはスマホでゲームをしていた。


「大丈夫だよ」


「するんでしょ?」


「うん」


龍ちゃんは、そう言ってベッドの上で両手を広げておいでと言ってきた。私は、龍ちゃんのその手の中に入った。


「凛、我慢してた?」


「うん」


「俺もだよ」


そう言って、ギュッーと抱き締めてくる。


【龍ちゃん、セックスする相手見つけたら?】


頭の中にそれが広がっていく。


【わざわざしなくたっていいんだよ】


お医者さんが言ったじゃない。治療をしなければ、私には難しいって…。なのに、何で龍ちゃんは私を抱くの?

それを愛しているからだと綺麗事を並べるなら…。どうして、避妊しないの?


愛してるなら、期待させるような事はしないでしょ?期待させないのは、優しさでしょ?愛でしょ?龍ちゃん!私が、どれだけこの体に裏切られてきたかわかってるよね?だから、龍ちゃん。愛してるって言うなら、セックスするのやめようよ!


そう言えなくて、左目から涙が一筋流れ落ちた。


「凛、愛してるよ」


「うん」


後ろから抱き締められて触られていく。首筋に息がかかっていく、私の体は龍ちゃんを知っている。だから、私の気持ちなんか置き去りにしていく。


「気持ちいいんだね、凛」


「うん」


うんじゃないよ!頭の中で、拡声器を持った小さな私が実況をする。


【凛、赤ちゃん出来るよ!赤ちゃんが欲しい、赤ちゃんが欲しい、赤ちゃんが欲しい】


小さな私は、コンサートでアンコールを叫ぶように拳を突き上げて【赤ちゃんが欲しい】と叫んでいる。


心が磨り減っていく。


「凛、愛してるよ」


「うん」


私が違う人に抱かれてるって気づいていますか?龍ちゃんは、私にゆっくりキスをしてくる。


「泣かないで」


「違う、睫毛入っただけ」


涙が止めどなく溢れてくる。止められないから、両手で目を隠した。


「凛、大丈夫?」


「気にしないで」


「わかった」


こんな話をしながら、出来るなんて滑稽だ。


「凛、愛してるよ」


「うん」


龍ちゃんは、私の中で果てた。だけど私は、そうはならなかった。


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