6.恋愛中のプレゼント
貴方のたいせつな、守りたいものは何ですか?
「なんできたないままなんだろう」
彼に振られてからきたないままの部屋。
もらったプレゼントの山があり、
部屋の隅にどけようと思ったが、移動しきれずに放置してある。
「どんだけ好きだったんだよ」
彼に電話で断られてから私は荒れに荒れた。
意識が飛ぶほどに酒も飲んだ。
でも全然気が晴れない。
物に当たってもむなしいだけ。
ガシャンと落とした目覚まし時計。
朝が弱い私のためにくれたものだった。
「誕生日プレゼントだよ」
彼が買ってきてくれた青い時計。
「あいつなんか。最初に話しかけてきたのはそっちのくせに。
他に好きな奴が出来たからってなんだよ。
あんな奴、こっぴどく振られればいいんだ」
可愛くない嘘。
だって私のそばにいるよりも好きな奴の話をしている姿の方が
ずっと笑顔でキラキラしてて、
正直かける言葉がなかったんだもの。
「アズ、大丈夫? もっとアズはさ、自分のことをかんがえな」
「自分のこと?」
「そう。彼のことなんか忘れて。
無理に忘れる必要はないけど次の恋いきなよ。
もう振られて半年になるんでしょう。
例えば、相手は――」
「同期の佐藤君っていうんでしょ。
元彼のこと忘れたくてもどうしても出来ないんだよ」
彼は確かに誠実でまじめで、純情。それになかなかカッコいいらしい。
「彼が好きなんだって、比べるものもなく言えるのだったら喜んで
アプローチでもしますよ。でも……」
「ふーん。だめなんだ。いい感じに見えたけど。
彼も理解してアズに合わせてくれてるようにみえるよ」
「確かに、好意持たれてるって自覚はあるよ。
それに応えて好きになりたい。相手のこと知りたいって”努力したよ”でもね、
努力して好きになるものではないとおもうの。
いつも相手に合わせてるし、相手も合わせているって感じが凄く嫌」
「それは仕方ないんじゃない?
だってアズのこれまでの好きな人って
アズとは表面的には逆だけど本質は似てるって人ばかりでしょう。
それが表面も似てる人になっただけじゃない」
その言葉で唐突に理解できた。
わたしは違う人間とかかわることで違う自分を見ていたいのだと
「それが嫌なの。わたしとほとんど同じ性質をもつ彼だから。
ほら。わたしって本当におちこむときは酷い落ち込み方するじゃない」
「そ、そうね。直せるなら直したほうがいいわよ。
散らかりっぱなしの部屋とか」
「捨てられるものなら捨てたいよ。もしかしたら戻れるかもっておもっちゃうんだもの」
「わかるわぁ」
新しく恋愛できたら捨てられるのかもしれない。
まだ、未練がある。
まだもう少しかかりそうだ。
END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます