5.登校時、家を出る時

 家を出て深呼吸。

 今日も学校。

 家族はみんな先に仕事に行った。

 私はいつも最後に鍵をかける役割。


 やだなとかいう感情はもうなくて、ただ今日ある教科で使うものを確認して

 物をスクールバッグに放り入れ、遅刻せぬように、時間に縛られながら登校する。


 数学も国語も

 体育も

 暇だなと感じる。

 楽しいとかもない。


 放課後になったらおとなしく家に帰る。

 なぜなら家事があるから。


 もう何分立っただろう母の説教はまだまだ続く。


 何もかも母の気に入るようにしないと説教だ。

 例えば家での態度学校での態度、

 塾での態度は大切にしないとすぐに怒る。


 私がすぐに表情に出るものだからなぜいけないのかと聞くことがためらわれる。

(今日は、お母さん仕事で疲れているからなのかな。いつもよりも怒鳴り声大きいな。)

 いつも言い訳はしない。

 おこらっれる時間が長くなるだけだと承知していた。

 灰と答えてもいい絵と答えてもどうせ説教の時間が長くなる。

 結果は同じだった。

「あんたのしていることはバッカみたいだな」

 今日の説教はこれで終わり。


 翌日、いつも通りに出かけ、いつも通りに終わるはずだった。

 体育の時間にけがをしてしまった。

 此処は保健室。

 クラスで生き場をなくした子供が最後に行き着く憩いの場。


 友達関係

 恋愛関係

 家族との関係


 悩んでも自分では答えが出なくて、

 暗く淀んで苦しくて、

 逃げたいのにまた自己嫌悪。

「ここにはそんな子達がよく来るのよ」


「先生……どうしたらいい?」

 瞳に涙を浮かべて、すがってしまう

「大丈夫。ここがあなたの居場所だよ」

 そんな都合のいい言葉を並びたてる。

 あるわけないとわかっていても、慰めが必要だった。


「また、来てもいい?」

「放課後にならほんの少し時間取れるわ」

 無理を言っていることはわかっているけれど。

 私の居場所を1つ見つけた。

 家もあるし、塾も行っている。

 けれどそこは親の機嫌を取る場所であり、競争社会で勝ち抜く場所ある。

 自分のための憩いの場所は特になかった。

 

 心配してくれる場所があることが幸せだなって思える。

 過度な負担は確かに良くない。

 

 自立は依存先を沢山作ることで成立するそうだ。

 ここはひとつの足掛かり。

 また増やせるように。あと2つくらいは欲しい。

 そうしたら生活が楽しくなる。


 やっと自分のためっていうことがわかり始めている。

 それがうれしい。認めてくれる場所って素敵だ。

 大切にしたい。そしれそう思える場所を見つけよう。

 END

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