掌編
1.視力検査とリサイクル
今日は新学期最初の視力検査だ。
名前の順で並んで、黒い丸がどちらに切れているのか離れたところから言い当てる。
ある意味ゲームのようではあるけれどきちんと目の機能が働いているかを調べる大切な検査だ。
「今日は身体測定が終わったら近所の方から料理が振舞われるそうだ」
「え? なんで?」
「副校長先生の発案だ。PTAの方を集めて作ってくださるそうだ」
「へ~。新学期早々変なことやるんだね」
11時50分になり、100メートル走が終わって生徒たちが体操服を着替え始めたころに先生から声がかかる。
「魚の煮物だそうだぞ」
おわんを取った生徒は口々に疑問の声をあげる。
「え?」
「なんか生臭いんだけど……」
近所のおばちゃんがいった。
「ええ? そんなはずないんやけどなぁ。あ、しもうた。
おととい給食センターから余った物をもろうたんや」
「一昨日って冷蔵庫入ってなかったら腐ってるんじゃ」
「そんなことあらへんて。副校長先生も食材のリサイクルやゆうて笑ってはったで」
この日から副校長の信用はがた落ちだったという。
「いやいや、食品はこんなリサイクルってしちゃだめでしょ、食中毒とかどうすんのよ。状況的にあり得ないって」
「ほんとにね。食品ロスって言葉が盛んになりすぎて
健康と食中毒ってっ言葉が抜け落ちているんじゃないの?」
「それを許可するのもあり得ないって」
「傷みやすい魚をリサイクルってどうなのよ」
「いや、どの食品でも駄目だよ。
缶詰なら1日くらい平気かもだけど。怖いってこの町の常識」
保護者の間でも話題になり転校する子供、私立に行く子供などが続出した。
少子化で子供がいないうえに、さらに子供がいなくなりその校長の代で合併の話が出てくる。
しょんぼりと従う学校関係者の姿がそこにあった。
END
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