第3話 古庄と駒田

 高校でも惰性でバスケを続けていた。


 あれ以来、意識しないようにしていた。けれど、クラス発表の時は嫌でも目に入る。駒田と古庄だから、同じクラスだと出席番号が隣だから一発だ。先生たちも僕とあかりが幼なじみだとわかっていて、気を利かせてくれたのかもしれない。


「駒田って、古庄と幼馴染なんだって?」


「あぁ、まあね」


「小学校からなんだろ? なんか無かったの、二人」


「なんかって」


「いやほら、付き合うとかさあ」


「……」


 友達からそんな話をされて、少し間が空いてから。


「ないよ、ただの幼なじみだから」


 なんて言葉を吐き出す。そうかー、もったいないよなーなんて言葉は、ただ耳を通り抜ける。


 数学の担当になって、宿題を集める係になった。担任からまだ提出していない人に声をかけてくれと言われて名簿を見ると、あかりの名前があって。


 昼休み始まり、ちょうど教室に行くと彼女がいたので、


「あか……」


 と、思わず口をつぐむ。彼女はそれに気がついた、ようにも見えた。けれどそれよりも自分は、彼女がメガネをしていないことが驚きで。


「……古庄、数学の宿題出してないって」


「あ、そうだった。ごめんごめん。これ、お願いね駒田君」


 彼女はそう言って宿題を手渡してきた。いつぶりの会話だったか忘れたけれど、当然その口からあの頃の名前は出なかった。


『コンタクトにしたんだ』


 って、言いたかった。いつもなら何の考えもなしに言えるはずなのに、どうして言えないんだろう。


 彼女は僕のことなんて気にも留めず、友達と喋り続けていた。そういえば彼女は最近、女子とばかり話をしている気がした。



 夏休みが過ぎると、急に身長が伸びた。


 そのおかげで、バスケ部ではレギュラー。急に声も低くなって友達に笑われたけれど、部活で活躍するとファンだとかいう女子もついてくるようになって、その変化には中々慣れなかった。


 秋の大会ではベンチ入り。一度だけ試合に出られて、チームは負けてしまったものの、結構活躍したお陰で有名になった。僕は思わず観客席を見回して——


あれ。僕はなんでバスケをやってるんだっけ。


いいや、別にバスケじゃなくても。サッカーでも、卓球でも、何でもよかった。ただ、僕は——


そこにあかりがいないことを確認してしまって、思わず苦笑いをした。


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