第2話 疎遠
中学に入って、何か変わるのかと期待したけれど、何も変わらなかった。ちょっと大きめな制服の着心地が悪いくらい。あかりの笑顔は変わらなかった。
僕は小学校最後の方にあかりがハマっていた、バスケットボールの部活に入ることにした。彼女に教えられるよう、もっともっと上手くなりたい。その一心で打ち込んでいくうちに、結構自信もついた。
けれど、中学は前みたいに気軽に遊びに誘えないし、誘われない。それも仕方ないかなって思ったけれど、時間が経つにつれてソワソワしてくる。
「あかり」
「うん、何?」
「今週末とかさ、体育館空いてるからバスケしない?」
「あーうん……いや、ごめん。ちょっと私、家の用事があるかも」
「そっか。じゃあまた」
「うん、またね」
そうやって、何となく距離を感じ始めていた。一年生が終わる頃振り返ったら、あかりと遊んだのなんて数えるくらいで。
*
二年になって、いよいよあかりと話せなくなっていた。近寄りがたいというか、避けられてる? でも、他の男子とか女子とは話せるようになっていた。バスケ部で少しずつ結果が出せてたから。
こんなにフリースローうまくなったんだぜって、早く自慢したかった。小学校の頃高速ドリブルに憧れてたの、僕もできなかったからって悔しい思いをした。今ではきっと教えられるんだ。そう思って、ようやく捕まえた夏休み前。
彼女は目も合わせず、どこか不貞腐れたみたいに。
「あかり? えっと、僕何か悪いことした?」
「……してないけど」
「じゃあ、バスケは」
「しない! 話しかけないで!」
そう言って彼女は離れていった。その後僕は一人で体育館でフリースローをしたけれど、まるでゴールが決まらなかった。
ゴールに弾かれたボールが足元に転がって、それを拾う。今まではすごく大切だったバスケも、何もかも意味のないものに思えてしまった。ただ、だからってどうすればいいかも分からなくて。
「……しょーくんって呼ばれたの、いつだっけ」
はぁ、と短くため息を吐く。昔からよく分からないんだ、あかりのことは。急に僕の事が嫌いになったのか、男子とは遊ばないと決めたのか。だからもう、仕方ない。
手に持ったボールが、まるでボウリングの球みたいに感じたけれど、それを力任せに適当に投げた。ボールは弧を描いて、偶然バスケゴールに収まると——何度か跳ねて、床に転がった。
僕はそれを拾わず、ただ少しの間立ち尽くしていた。
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