第4話 須藤 茜は考える
今日私は告白をされた。
中・高合わせればもう何度目の告白だろうか。
贅沢な事なのかもしれないけれど、告白の場に赴く事にはもう慣れてしまった。
相手の気持ちとか、今後の関係性とかに悩む事も今の私には無い。
そんな私は呼び出しを受けた時点で、もはや定型文と化した断りの文句を淡々と相手に伝えようと思っていた。
だって、私には好きな人がいるから。
新城 南、私の幼馴染で大好きな人。
兄のようで、弟のようで、親友のようで、友達以上恋人未満と言うか、なんなら既に体の一部と言うか……本当になんて表現したらいいのか分からないけれど、私にとって彼が世界で一番大切な存在ということは確かだ。
おそらく『家族』と括るのが一番正しいのかもしれない。
だけど、私はその括り方が好きでは無い。
だって一般的に家族に恋はしないでしょう?
だから、私は彼を家族とは呼びたくないんだ。
それでも、子供の頃は普通に私も彼を家族だと思っていた。
四人の親に三人の兄妹。
自然にそう思えるくらいに両家の距離は近かったから。
そんな私が、彼を一人の男性と意識し、好きだと自覚したのは中学生になってから。
ある日、先輩から彼が告白を受けている現場を見たのがきっかけ。
その時は少し胸の痛みを感じたくらいだったけれど、それからは彼が女子と仲良く話しているのを見るとイライラするようになり、特に彼と仲の良い女子には少し冷たくあたるようになった。
そしたら、雰囲気の変わった私に対して「新城君が好きなの?」とその子に聞かれた。
その時に初めて、私は彼の事が好きなのだと自覚したんだ。
私はその時彼女になんて答えたのかは覚えていない。
だけど、彼を取られるのが絶対に嫌だった私は、その日からこれみよがしに彼の側で過ごすようになり、彼に近づこうとする女子達をそれとなく牽制するようになった。
それなのに、それなのに私は今まで彼の彼女になれた事は、ない。
何故なら、彼が私を一度たりとも女として見てくれた事がないから。
遠慮がなくて、まるで男友達と同じ扱いの親友ポジで接する彼。
そんな彼に合わせるため、これまで私は必死で恋心を隠しながら彼が望む親友役を演じてきたんだ。
悲しいかな、それが功を奏しすぎて、親も、友達も、誰もが私達をカップルとは思わず、仲の良い兄妹くらいにしか認識してくれなかった。
それでも、少しでも彼の気を引いてみたくて、ワザと近くで着替えてみたり、いくらか成長した胸を押し付けてみたり、私なりにそれとなく色々してみたけれど、彼に気にした様子は全く無く、今まで良い反応を見せてくれた事がない。
…まぁ意識するまでは一緒にお風呂ではしゃいでいた私も悪いのだけれど。
いっそのこと、彼に想いを伝えてみようと思った事もある。
でも出来なかった。
出来るはずがなかった。
だってもし失敗したらこの関係はどうなるの?
もし告白がきっかけで距離を置かれたりなんかしたら…そんなのはムリ。
絶対にムリ。絶えられるわけが無い。
そんな恐ろしい事は考えただけで震えてしまうもの。
だから私はこの関係をキープしつつ、密かに女子力を上げて彼に意識してもらえるように努力するだけ。
ミナはミナで、どんなに可愛い子から告白されても全て断ってくれている。
理由を聞いたら「だって茜と遊ぶ時間が減るのは何か違う気がして」なんて言ってくれたんだ。
もぅ…大好き大好き大好き大好きだいすきー!!
ただ、ミナがいつまでそんな風に思ってくれるのかは分からないのも事実。
高校生になって益々素敵になってしまった彼。
実は最近、少し焦っていたりする…
そして、これは本当に迷惑な話なんだけど、彼を好きだと自覚した頃から、身だしなみにも気をかけるようになったせいか私にも告白する子や近付いてくる男子が増えるようになった。
本当に邪魔くさい。
私にはそれらに構っている暇なんてないのに。
……はぁ…めんどくさいなぁ…
また今日も帰りが少し遅くなってしまう。
名前も知らない誰かさんのせいで、今日はミナと一緒に帰る事が出来なくなっちゃったじゃないか。
はぁ…早く断って帰ろ。
と、思った時にふと名案が浮かぶ。
あれ?もし私が誰かと付き合うかも…なんて言ったらさすがのミナも意識してくれるんじゃないか?と。
コレだ!と思った。
勿論本当に付き合う気なんてさらさらない。
フツーに断って終わり。
だけどミナには…ふふふっ♡
返事は一旦保留にした事にしてしまおう!
どのタイミングで言うかは今日じっくり考えて、明日あたりに作戦実行してみよう。
ふふ♡どんな反応してくれるかな?
楽しみ♪♪
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