第50話:VSドラウグ


 居合いと雷斬りを合わせた一撃。

 それは数匹のドラウグを吹き飛ばしてポリゴンに変えた。

 それにより気付かれたのか十匹以上の敵がこっちに視線と敵意を向けてくる。


「ナユタ、アンデット用の技ってあるか?」

 

 巫女のJOBならそういう技もあるだろうと思い聞いてみれば返ってきたのは次の言葉。


「あるよ、でもお祓い棒忘れた」

「それこそ巫女のアイデンティティじゃね?」

「……次から気を付ける」

「次あるのかなぁ」


 駄弁りながら、俺は珍しく素のステで戦う事にする。

 いつものように上がり続けるステータスに合わせる必要が無いが、多少の違和感。何に違和感を覚えてるのだろうかと思って体力ゲージを見てみれば、減ってないことに気付く。


「あ、体力減ってねぇ」


 それに違和感を覚えてることが異常な気がするが、体力が残ってるのにどうしても違和感を覚えてしまう。思えば俺は銀嶺戦以降背水してるし体力が無かったのが普通だったので仕方ない気がしてきた。


「いつもに比べて火力が無いから、居合い主体になるなこれ」


 それか雷斬り、でもあっちの方がSPを消費するので数が多いと悪手にも思えてしまう。目測は今の所十五体、前の情報を考えるに数は増える者だろうから――それを考えるにやっぱり短期決戦がいい気もする。

 だけど禍津を使わないと言った以上、使うのはダサいので今回は別の攻略法を試すしかない。


「ナユタはいつも通りのワープ戦法か」


 ドラウグと対峙しながら横目でナユタを見れば、縦横無尽に空間を移動して敵を切り裂き続ける巫女の姿が……巫女って何だっけ? と思いつつも俺は俺の仕事をする。


「これで六体、レベルは俺でも確認できるけど普通に数が多いな」


 俺の現在レベルが確か68。

 それで見える敵のレベルは40~70の間、今まで戦った敵をから考えるに弱い部類には入るが、亡者戦と同じで数が多いのが厄介だ。

 今なんとかなってるのは三人と一匹で戦っているからであり、多分もっと人数が少なければ危なかった。

 ファンクラブの人は多聞だがタンク職。

 盾を構えダメージカットのスキルを俺等に撒きながらドラウグの群れを抑えている。ザ・タンクみたいな行動に一瞬サムズアップするドMが過ったがなんとか頭を振り払って忘れる事にした。


「……これ、奥進まないと終わらないだろ多分」


 観察して分かったがこのゾンビ擬き達は墓場から湧いているのではなく、墓地の奥に見える洞窟から湧いているみたいだ。

 何があるか分からないが、多分そこが呪いの根本がある場所な気がする。


「ナユタ一気に抜けるぞ」

「ん――了解」

「承知した」


 俺がそう言えば今回のパーティーメンバーの二人が同意した。

 銀珠に合図を出し、一気に炎を吐いて貰って道を作る――それで出来た道を疾走し、俺達は洞窟の中に滑り込んだ。


「更にパンデミックだなこれ」


 思った以上に広い洞窟、奥は見えないがそこら中にドラウグが蔓延っている。その上奥の方には靄があり多分そこから湧いているんだろうってのが分かった。


「保管庫みたいだね、そういえばセツラはゾンビゲーは平気なんだっけ?」

「あぁ、それは大丈夫」

「ドラウグは幽霊の類いだぞ」

「ダメかも知れない……まぁ斬れるしいけると信じるか」

 

 そんなわけで中に居たドラウグと戦闘することになって数十分後、どういうわけか無限に沸き続けるそいつらと戦う事になったのだが、気付いたことがある。

 こいつら無駄に硬く強いくせに機械的なのだ。

 普段のモンスターはありえないくらいに殺意が高いのに、このモンスターは人形的というかかなり正確に動いてくる。パターンがアルというかなにかに操られているような……。


「セツラ、呪いの深度が上がった――なんか来る」

「……どういう事だ?」

「分からないけど、多分でっかいの」


 どういうことなんだろうと思ったのも束の間のこと、急にだが洞窟が揺れ始めた。

 正確に言えば洞窟の奥、今まで靄になっている部分から巨大な腕が生えてきた――たった一本の骨腕それはその場に居たドラウグ達を薙ぎ払ってそいつらから何かを吸収した。


「あーこれやばいかも」

「……逃げた方が良いやつかこれ」

「自分は二人に従おう」

「洞窟じゃ絶対に部が悪いから、出た方がいいかもね」

「……了解」


 一番この中で敏捷が高い銀珠に乗った俺等はそのまま一気に駆けだした。

 壁や天井が崩れる音を聞きながらも、逃げ出し出る頃には完全に洞窟が崩れそれが姿を現した。


【レイドボス、怨骸のドラウグが現れました。   推奨レベル110】


 もしかしてだが、俺はまた踏んじゃいけないフラグを踏んだのだろうか?

 そんな事を切に思いながらも、現れたそれに視線を合わせる。

 それは巨大な髑髏頭と二本の腕、明確な殺意を持って此方を睨むそれに覚悟を決めた俺は禍津を装備し刀を構えた。              

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