第48話:気になるワンコの性能は?
「……セツラ、その子どうしたの?」
「新しい仲間?」
合流してから数分、俺の後ろに隠れる幼女を見ながらナユタはそう言った。
……二つぐらいの意味が込められてる気がしたので、とりあえずそう答えたんだが今のであってたのだろうか?
「そうだけどそうじゃなくて……なんでそんなに怯えてるの?」
どうやら違ったらしく、俺の後ろで怯えながら威嚇する銀珠のことが気になって聞いてきたらしい。
「……分からん」
「私なにかした覚えないんだけど……ねぇどしたの?」
流石にナユタも初対面の幼女に怯えられるのは堪えるのか、座り込んで目線を合わせて話しかけるも、今度は禍津の後ろに隠れてしまった。
『銀珠、どうしたのだ?』
「……この子って気配が独特だけど御霊?」
「一応?」
御霊に気配とかあるのかとも思ったが、多分ナユタにしか分からない感覚だろうから飲み込んでおき、とりあえず肯定した。
銀珠は一度死んで御霊となったモンスターだから多分そういう点でナユタは言ったんだろう。
「どこで仲間にしたか分からないけど、出来るだけ隠した方がいいよ」
「あー確かに、なら銀珠あっちの方でいてくれ」
「……んセツラ、分かった」
という事で銀珠を呼びワンコ形態に戻って貰いちっちゃいそいつを俺は頭に乗せた。手乗りワンコならぬ、頭乗りケルベロス。
……三つ首の頭に乗ってる光景はツッコみ所はあるだろうが、これならテイムモンスターだと思われるだろう。
「それなら……大丈夫かも?」
「ならいいか。でだナユタ、今日は何する?」
「その前にその子の能力聞いてもいい?」
「……いいけど、今は何の能力も無いぞ? 強いて言うなら銀珠が戦うぐらいだな」
銀珠は特異な生まれの御霊なせいか分からないが、以下のような能力になっている。
種族:ケルベロス
まだ幼い御霊は何の願いも抱いておらず未覚醒。
『保有スキル』
《すがたをかえる》
姿を犬と人に変えれる
《銀珠頑張る》
ケルベロスの姿となって戦う事が出来る。
微笑ましいスキル欄に特に記載されていない能力。
一回一緒に戦ったが大きさをある程度自由に変えれて戦えるだけで、それ以外は今の銀珠には出来ず、言わば完全にテイムされたモンスターみたいな感じ。
「ほんとに御霊?」
「俺に授けてくれた奴曰くそうらしいけど、銀珠といれるならなんでもいいしなぁ」
冥界で出会った仲間である銀珠。
この世界でこいつと冒険出来るなら形は正直なんでも良いのだ。
「……私も乗せたい」
「今は無理っぽいし諦めてくれ」
「むぅ……」
それから俺達は解放されたという世界樹付近を目指して歩き始める。
エタニティ大陸の中心部にあるらしいので多分真っ直ぐ進めば見つかるだろうという思考。マップにも世界樹の枝らしきものが映ってきたし多分そろそろ着くだろう。
「っと、何か来るぞナユタ」
「分かってる、音的に多分蟲のモンスター」
羽音が聞こえたので身構えれば現れたのは巨大な蜂。
現実で刺さったら一発アウトと言えるくらい針を持っており普通に怖い。
レベルとしては45。今の俺のレベルからすると弱い敵に分類されるが、このゲームはそれほど甘くないのだ。
「蜂ってことはそりゃあ仲間いるよな」
軍隊で基本行動するという部分を忠実に再現したのか数が多い。
一匹一匹のレベルが低く、一体なら余裕だろうが……このゲームでこれは辛い。
掠ったらダメだろうし何より俺のスタイルに毒は辛い。
「禍津は温存、銀珠頼めるか?」
『仕方ないがそうしよう』
わふ……と、吠えてから俺達の前に出る銀珠。
大きさを変えて2メートル程の巨体になった彼女は蜂目掛けて突撃した。
「あ、銀珠使うのは冷気だけにしてくれ――森で灼熱は不味い」
このゲームの事だ炎系の奴を森の中で使ったらどんな被害が出るか分からない。
最悪の想定だが森火事一直線かもしれないし……。
「じゃあ俺達もやるぞナユタ」
「自在に変えれるんだ大きさ」
「まぁな、とにかく集中しよう」
装備してるのは霹靂神。
攻撃力も高く雷属性を帯びたこの刀はかなり使い勝手が良い。
まだ打刀ほどは使ってないが、ハーデス戦でかなり愛用したおかげか手にも馴染んでいる。あの蜂のHPがどのぐらいか分からないが蟲系のモンスターは体力が低いイメージがあるので多分当てれば速いだろう。
「素早いなやっぱり」
「蜂だもんね」
ナユタが今もってるのは忍刀に近い何か。
御霊であろう苦無は使っていないようで普通に蜂を処理してる。
銀珠が心配で様子を見てみれば、蜂を冷気で氷漬けにしておりそれを砕いて確実に敵を倒していた。
「流石銀珠……俺も頑張るか」
居合い+雷斬り。
このゲームは多分限定はされるだろうがスキルを混ぜて使えると言うことを俺はハーデスとの戦いで学んだ。
SPの消費は激しいだろうが、残った奴を一気に倒すのならこれがいいだろう。
チャージは4秒、最初は素早かった蜂も銀珠の冷気によって動きが鈍くなったのか、今なら簡単に攻撃を当てられる。
前ステップで近付き、そのまま抜刀。
数匹固まっていたところに俺は雷を纏った居合いの一撃を叩き込み、そのまま戦闘を終わらせた。
「GG」
「新技?」
「あぁ、居合いともう一つのスキル混ぜてみた」
「便利だよねこれ。とりあえずお疲れセツラ」
戦闘後の余韻に浸かるわけでもなくそんなことを話し合っていれば、いつの間にか銀珠がいない事に気付いた。
「……銀珠?」
焦ってしまう。
こんな場所にケルベロスがいるのは普通に考えて有り得ないし、一応PK出来るこのゲームだテイムモンスターに近い存在の彼女が敵と見なされたら不味い。
「禍津銀珠探すぞ――って禍津もいなし」
後ろを振り向けばいつも一緒の相棒もいなかった。
それなら二人で行動してるだろうしと安心したが、この短い時間で何処に行ったんだあの二人は……。
『主様不審者捕まえたぞー!』
そして五分後ぐらいのこと、戻ってきた禍津達が三人のプレイヤーを咥えて帰ってきた。
「ぺっしろ銀珠、離してやれ」
俺達の前に所謂お座りをしながら、尻尾を振りどやぁって感じで三人を見せている銀珠にそう言った。
『しかし主様。此奴等はずっと主様達の後をつけていたのだぞ? 処すべきではないか?』
「いや、重いぞそれ……デスペな重いんだから解放してやれ」
『主様は甘い気がするのだ……銀珠下ろしてよいぞ』
離されて地面に下ろされる三人組。
何の目的で尾行してたのか知らないが、めっちゃ感謝したような表情でこっちを見ている。
「で、なんで尾行してたんだ?」
「――――……」
無言、理由を話さないつもりなのか一番前にいる男はそんな姿勢でいた。
……怪しいが、よく観察すればその視線はナユタを向いている。
「銀珠、ぶん回し」
とりあえず話さないのなら仕方ないので銀珠にぶん回して貰う事にした。
「待ってくれ、話す。話すからそのケルベロスを嗾けるのはやめてくれ」
「最初から話せよ。それで目的はなんだ?」
「ナユタ様の前で話すのは憚られるのでな、少し離れた所でよいか?」
「……まぁいいぞ?」
ナユタに言えないないようって何だよと思いつつ、目的聞けるならいいやってなったので断りを入れてから三人を連れて話を聞くことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます