第33話:レベル上限解放


「でねでね、刀ってのはそうやって作るんだ!」

「成る程なぁ、凄いなムラマサそこまで詳しいなんて」

「まだ未熟だけどあたしはリアルでも刀を作ってるから当然だ」


 とりあえずギルドに辿り着くまで俺は彼女の話を聞いていたのだが、かなり詳しく刀の作り方や歴史を教えてくれたのだ。傍で浮いてる禍津は退屈そうにしていたが、刀の話は意外に面白くて時代によって色々な作り方がある事を知れた。


「あ、確か俺が普段使ってる刀が打刀って奴なんだっけ?」

「そうだな、室町時代頃に作られて……反りが浅くなってたり、実戦向けなのが特徴なんだぞ!」

「だから使いやすいのか……そうだ良かったらで良いんだが、この打刀を直せるか? 結構耐久減っててさ。鍛冶職の知り合いがいなかったから直せなかったんだよ」

「うんいいぞ! なんならセツラの刀は今後も全部あたしが直してやる――友達……だしな」


 それは助かるが流石に今後もというのは悪い気がする。

 ……今までも彼女の装備には助けて貰ったし、何より今後も装備を直してくれるというのなら、ちゃんとこれは伝えておこう。


「流石に悪いからさ、素材集めとかは手伝うぞ。今日は解放クエストやるが、暇だったら素材集めでも行こうぜ?」

「うん、そうだな! それならあたしに任せろ、素材集めはいつも一人でやってるから詳しいんだ」

「そうか、それならイベント終わったら一緒に行こうか」

「約束だぞ――あ、ギルドについたな……」


 そんなこんなで辿り着いたエタニティのギルド、思えばギルドという場所にやってくるのは二度目なんだが、やっぱりかなり作りが違うようだ。

 エタニティのギルドはファンタジーで想像出来るような酒場のような場所であり、かなり賑わっていた。


「えっとカウンターは……こっちで、いつものお姉さんがいて」


 受付だろうし目に入ったカウンターに向かおうとしたら彼女に手を引かれて奥のあんまり人気の無いカウンターに連れて行かれた。


「……よし、ここで受けれるぞ」

「穴場だな、えっとどう受けるんだ?」

「あたしに任せてくれ。なぁリース、解放クエスト受けたいんだが……」 

「貴女はカンストしてるでしょう? ……もしかしてその連れの方ですか?」

「あぁ、あたしの友達――こいつのレベルを解放したいんだ。受けれるか?」

「そうですか、貴女が誰かを連れてくるなんて初めてですね――分かりました手続きさせていただきます」


 ムラマサと場所を変わり、リースと呼ばれた受付嬢と俺は会話することになった。

 見た限り耳が長くエルフの彼女はかなり鋭い目つきをしていて、俺を少し睨んでいうる。何かしてしまったのか? と思ったが、すぐにそれはなくなり一枚の用紙を渡してきた。


「はい、このクエストを終わらせればレベルは解放されます。今はイベント期間ですから簡単だと思います」


・上限解放への道

 現レベルより五以上の差があるモンスターを自身の力で7体倒す。

 

 クエスト用紙に書かれていたのはそんな事。

 意外に簡単に見えるクエストだし、このイベントではかなり幅広いレベルの蛇が出てくるから確かにやりやすくはあるだろう。


「いいですか? 自身の力で頑張ってください。くれぐれも彼女の力を借りてはいけませんよ」

「……ん? まあ了解だ」

「では頑張ってください――彼女を頼みます」


 最後に釘を刺すようにそう伝えられそれで会話は終わり、次の方……という冷ややかな声を聞いたあとムラマサの所に戻れば、彼女は椅子に座り足をぶらぶらさせながら待っていてくれた。


「終わったか? どうだリースは優しかっただろ?」

「あぁいい人だったな」


 まぁ正確に言えば、過保護な人に見えたが……まぁそれは置いておき、彼女の方が強いだろうが任されたのなら頑張るしかない。

 どこにいけばいいかは分からないが、とりあえずクエストを達成するためにも昨日沢山蛇がいた森を目指してみよう。


「あ、その森ならあたしも分かるぞ。奥に行けばいい鉱石が採取出来るんだよな」

「そうか? ならついでに素材も集めてみるか。まぁそれじゃあ出発だ。結構歩くが大丈夫か?」

「あぁ、あたしはSTM持久力にかなり振ってるからスタミナは沢山あるんだ。それにあたしの種族は狼人だから走るのも速いぞ」


 狼人って事は……獣耳があるのか?

 フードで分からないがそこについてかなり詳しく聞いてみたい。でも引かれるかもしれないので、心の中にしまっておいて今はとりあえず森に向かおう。


「なら大丈夫か、禍津もそれでいいな?」

『よいぞ、主様が強くなるなら妾も嬉しいのだ』


 そんな訳で森を目指すことになり、イベントのメダルを集めながらも道を進んで行った。森に着けばやはり蛇が多く、メダルも集まったのだが……適性レベルが高い奴があまり見つからないのだ。


「……禍津、探してきてくれるか?」

『よいぞ? 待っていてくれ主様』

「おう、任せたぞ禍津」


 俺から離れて飛んでいく禍津。

 その様子を見ていたムラマサが少し不思議そうな顔でこんな事を聞いてきた。


「あの子ってセツラの御霊だよな?」

「そうだぞ、禍津童子っていう俺の相棒? だな」

「なんで離れられるんだ? 御霊は一心同体、基本はあたし達から離れられないはずだぞ」

「人型だからじゃないか? 珍しいらしいし、いつもあんな感じで自由だぞあいつ」

「そうなのかなぁ……あ、セツラよかったらあたしの御霊も見るか?」

「気になるな、よかったら見せてくれ」


 ここ最近色んなプレイヤーに会うからか様々な御霊を見ることが出来るな。

 彼女は鍛冶職だし、戦闘するプレイヤーとは違う性能の御霊を持ってることだろう。そんな事で待ってれば、彼女の服から2匹の狸が現れた。


「これがあたしの御霊のヒタヌとウチタヌだ」


 現れたのはひょっとこのお面を着けている一対の金箸を持った狸、そして鉢巻きを巻いている小槌を持った狸だった。

 めっちゃ可愛い気がするし、なんなら俺にビシッと敬礼してる姿すら可愛い。


「いつもあたしの鍛冶を手伝ってくれるんだ」

「いい仲間だな、めっちゃ可愛いし」

「だろだろ! 初めて会ったときから運命感じてさ、ずっと一緒にいるんだよ!」


 そこからは2匹の狸の話が続いたが、動物は好きなので聞いてて楽しかった。しかも、話している最中に照れた狸たちが可愛くて……とか考えてた時の事。


『主様、戦闘準備だ! 沢山呼んで来たぞ!』


 凄い速度でやってきた禍津が10匹以上の蛇を連れ戻ってきたのだ。しかも、全部が高レベルであり、1匹に至ってはレベル差が20はある。


「禍津ゥ!? おま、どんだけ連れてきてるんだよ!」

『張り切っただけだぞ!』

「張り切りすぎィ! ――あぁ、もう装備だ禍津」

『了解だ主様――妾達の力を見せようではないか!』

「あ、あたしも頑張るぞ」


 10匹以上の蛇との戦闘、苦戦はするだろうが勝つしかないので頑張ろう。

 イベント期間に一回でも死んだらその分一位が遠のくし、何より約束してるレイナに悪いからだ。

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