第5話:初遭遇の御霊様
「あーとりあえず一つツッコませてくれ」
ゆりかごを起動し、エタファンにログインしてから大体二十分後のこと、俺は襲ってくる頭痛を抑えながらそう言った。
「……なにに?」
「お前そのまんま過ぎないか?」
始まりの街と呼ばれるウェントスの門前、目の前にいるのは真っ白な肌に白髪赤目のあまりにも白すぎる少女。
兎のような印象を抱かせるその姿は、現実でも見覚えがあるもの……というかあまりにも現実のまんまだった。
ネットリテラシー! と叫びたいほどにまんま過ぎるその姿。
面倒くさがりのこいつのことだから、きっと全身スキャンしてそのまま終わらせたんだろうが……せめて身長変えたりとか。
いやな、一部分は変わってるんだけどさ――それは俺がツッコんでいい物ではないので言葉を飲み込んだ。
「そっちこそ殆どまんま」
「……いや変えてるし」
流石にまんまだと配信してる以上特定されるから結構なアレンジはしたつもりなのだ。分からないぐらいには変えたはずだし、そこまで言われる筋合いはないはず。
「とりあえず合流、何する? あ、そうだ」
【ナユタからフレンド申請が来ております。承諾しますか?
・はい いいえ】
急にきたフレンド通知、状況的に雪からの物だろうし断る理由も無いので俺はすぐにはいを選び、続いて届いたパーティー申請を受け、俺は雪……改めナユタとのパーティーを組んだ。
「パーティーの利点って何かあるか?」
「大事なのが敵MOBを倒した際の経験値の共有、
「省かないで欲しいんだが」
「喋り疲れるからやだ」
「お前らしいな、ほんと」
まぁ、後で調べればいいやと思いながらも俺はもう少し詳しくこのゲームの事を聞くことにした。
「そういえば回復とかってどうするんだ?」
「ポーションとかを飲んだりかけたりする感じ、薬草は調合しないと使えない」
「成る程ハーブ丸呑みは出来ない感じか」
「ゾンビゲーじゃないし当然」
そんなゾンビゲーがいつもハーブキメてるみたいな事言うのやめようぜ。
……とか、そんな事をツッコミながらも俺達は街の中を進み、今更ながらナユタのレベルを見てないことに気付いたので確認する事にした。
ウィンドウを開き、パーティ仲間の情報を確認すれば、そこに表示されてたのはレベル150というもの。
「カンストしてね?」
「レベル高いって言った」
「……高すぎる気がするんだが」
まだこのゲームが発売されて半年しか経ってない気がするんだが、何処にそんな時間が合ったんだろうか? 学校ではこいつと殆ど一緒だし、何よりこいつには実家の巫女の仕事があるはずだし。
「というかお前のジョブ巫女なのか、そこもまんまかよ」
「私巫女以外やるつもりない」
巫女って大抵のゲームで支援職みたいなイメージがあるが、こいつが他人の支援とかすると思えないな。
「あ、そうだ他のプレイヤーに会ったら聞きたかったんだけどさ……御霊ってどんなのなんだ?」
イメージとしては何か霊みたいな感じなんだが、説明書以外の情報がないから分からないんだよな。このゲームにおける唯一無二の相棒と言うことは分かるが、どんな事が出来るかも知らないし。
「見せた方がはやいし見せる――出てきてコクビャク」
ナユタがそういえば出てくるのは一つ尾の黒い狐。
すらっとした毛並みと妖しい雰囲気を持つその狐は、初めて見るだろう俺に警戒してかめっちゃ睨んできた。
「これが御霊?」
「うん、動物型の御霊だよ」
「……というかさここでも狐かよ」
「私だから……あとこの子は武器にもなる」
「結構多彩?」
「ん、個性も全部人にによって変わる本人の現し身的な存在」
もうちょっと詳しく彼女に聞いてみれば、御霊の生まれる条件は完全ランダム。個人の願いや想いで変わるとのことなのだが……俺にはいまいちよく分からなかった。
御霊の能力もマジで沢山あるらしく、ナユタの御霊は狐状態と武器状態がある結構レアなタイプらしい。
「一番珍しいのは人型、基本生まれないし個性も凄く変」
「へぇ、やっぱり結構詳しいんだな」
「当然、敬ってもいいよ」
「はいはいナユタ様……あとさ、御霊の生まれる条件ってなんだ? コクマーさんに聞いたんだが、教えてくれなくて」
「……セツラ次第、頑張って」
こいつに聞けばなんか分かると思ったんだが、帰ってきたのはそんな答え。
やっぱり自分で探すしかないのかとも思ったが、このゲームの醍醐味なんだしそっちの方がいいという結論に至った。
「うし、じゃあ適当に遊ぼうぜ。色んな所行ってみたしおすすめの場所教えてくれると助かる」
「ん、でも私今エタニティ大陸から離れられないからこの大陸内しか案内できない」
「了解だ……まぁ始めたばっかりだしそれでいいぞ。あ、戦闘は俺がやる流石にパワーレベリングは嫌だし」
「ん、分かった」
そういう事になったので探索メインで遊ぶ事になった俺達。
このゲームの細かい事について聞きながらも、二人とナユタの御霊であるコクビャクと一緒に進むことになった。
久しぶりに彼女と一緒にゲームをするが、こういう探索もこの世界の醍醐味だし、今日はゆっくり楽しもう。
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