第3話:配信者VSワイルドホーク
強がったら出てきたワイルドホークというエリアボス。
挑むと言ったからには……というかもう戦うという選択肢を選んだ以上逃げられないんだけどさぁ、律儀に俺のフラグを拾うとかある?
いやあったんだけどさぁ……。
「とにかく鷹がやってくる技って何だ? 爪と嘴での攻撃はテンプレだが……後は突撃とかか?」
王道のMMOであるこのゲームだし想像出来ないような行動はしないと思うが、発売時のCMで機械文明もあるとか言ってたし、もしかしたらガトリングを持ってるかもしれない。
でも一応ここはスポーン地点の近くだしそこは心配しなくていいはず……だよな?
推奨レベルは少し高いが所詮は序盤のダンジョンだろう場所のボス、きっと素直な攻撃でプレイヤーを楽しませてくれるんだろうな。
「……って思ってた時期が俺にもあったんだよ畜生!」
縦横無尽に空を飛びながら、羽の刃を飛ばしてくるワイルドホーク先生。
確かにこいつは素直な攻撃が多い、上空からの爪での奇襲や嘴での噛みつき、予想通り突撃もあったが……その隙を突くようにして三割は削れた。
だけど問題はそこからで、それからずっと飛び続ける上に羽を飛ばしてきて遠距離攻撃してきたのだ。しかもそれかなり鋭いのか木を両断したし、当たったら多分かなりのHPを削られるだろう。
「受け流しは出来るけどさ、これ耐久値ゴリゴリ削れるんだけど!?」
しかもつらいのが、パリィの際に出来るという反撃も空中にいるこいつには殆ど効果がないから攻撃の隙が――。
「急募:アーチャーかウィザード職の人。それか遠距離持ち」
[いないよぉ]
[やっぱりこいつが苦しんでる姿はおもろい]
[自分で頑張れよ]
[縛りプレイみたいになってて草]
[い つ も の]
リスナーが辛辣なんだけど!?
てか俺が出来る遠距離の手段なんて刀を投げつけるか、落ちてる石を投げつけるしかない……あれ、石投げればよくね?
「この神ゲーなら石にも判定あるだろ!」
迫る刃羽を避けながら俺は地面に落ちている石を拾っていき、あの鷹目掛けて投げつける。とりあえず狙うのは腹か目、だって怯ませれば攻撃の隙が出来るだろうから。
[これが侍の姿か?]
[正しいんじゃない?]
[卑怯で草]
[目とかしか狙わないの草]
[腐れ外道]
うるせぇ、こっちは勝つために必死なんだよそのぐらい許せ。
口に出したいが、いまわりと集中してる俺はそれにツッコミを入れてる暇はなく――ただ目の前の相手を倒す為に動き続けていた。
走るのにも避けるのにもSPを使うせいで本当にジリ貧。
だけど、負けたくないので俺は頑張るしかない。
「しっ怯んだ」
頭にクリティカル判定があったのか、大きく怯んだワイルドホークが地面と近くなった。それを見た俺は一気に距離を詰めてそいつの脚からよじ登って横っ面に拳を叩き込んだ。
「耐久値やばいからな、殴り続けてやる」
頭にはクリティカルが入る事が分かったのでとりあえず殴りまくって地面に落とす。絵面としては軽装備の侍が鷹に張り付き殴りまくってる光景――かなり酷い気がするが、これも勝つためだから仕方ないのだ。
暫く頭を殴り続けていると、急にふらついたワイルドホークがふらふらと地面に落ちていった。
よく敵のHPバーを見てみれば点滅する星マークが表示されていて、スタンしているような状況になった。
見るからに攻撃してくれという状況に俺が選んだのはスキルの居合い。
鞘に刀を収めて、四秒のチャージ。チャージが終わった直後動き出す敵の姿にスタン時間が短いことを理解した。
だけど、こいつが次の行動に移るよりも俺の方が絶対に早い。
でも、これを当てたら俺にも隙が出来反撃をくらうだろうが――今はダメージ優先だ。
「居合い」
当たって削れたのは1.5割ぐらい。
さっきまでとは違う削れ方にやっぱりこの技が強いのを理解したが、本当に必殺技みたいなモノだと言うことも知った。
予想通り爪で反撃されたが、その受けた反動で少し離れられてSPを回復することが出来た。あと敵のHPは四割、この調子なら勝つことが出来る。
「よしこのままいけば――って、なんだ?」
急に感じる悪寒と気持ち悪さ。
それに加えてHPバーが削れていくのが見えた。
何が起こったんだと思いながらステータス画面を開けば、ステータスに髑髏マークが表示され詳細に毒と書かれていた。
「毒持ちとかふざけんな!」
このゲーム本当に殺意が高すぎ。
心の中でそう愚痴りながらもステータス画面を開きながら戦ってどのぐらい削れるかを確認する。
それで分かったのが十秒で2ダメ-ジ――俺の残り体力が36ぐらいだから?
「って激しくなってるし考えてる暇ないよな!」
残り四割になった瞬間に動きも激しくなったし、俺は毒も喰らってる。
というか体力半分きったら毒使ってくるとか性格悪すぎるだろ、絶対これソロで戦っていい序盤の敵じゃないって本当に。
えっと俺に要求されてるのが、HPの確認、敵の撃破、攻撃と回避?
マルチタスクが過ぎるかも知れないが……というかレベル3の俺に要求することが多い気がする。
「ここから速攻だ。俺が死ぬまであと二分十秒、せめて死ぬならお前だけでも倒す」
死なば諸共。
このゲームのクリティカルは致命的な所に当ててれば判定されるようなので、首や頭、腹や脚の腱などを狙えばいい。
最初はあまり気付かなかったが、それらの場所を斬ったり殴った時とかダメージでかかったし。
「狙いやすいのは、首だろやっぱり」
それにダメージを考えれば居合い一択。
だからやるとするならば、懐に潜って首を狙った居合いだろう。
問題があるとすれば、動きが激しくなってるから潜りにくいことだが……不可能ではないはず。
そもそもレベル差が22もある奴に挑んでる時点で馬鹿なのだからやるしかない。
片手にもうソウルメイトといえる石を構え、俺は走り出す。
見極めるのは攻撃の瞬間、こっちに爪を向けて迫ってくる刹那を狙って――力を込めて投擲。
「ビンゴだな」
攻撃に合わせてカウンターすれば怯ませることが出来ると思ってやってみれば、思った通りに怯んでくれたので俺は再度チャージしながらワイルドホークへと接近する。懐に潜りチャージが終わった瞬間の事、俺は相手の首目掛けて刃を振るい――斬った感触を感じたと共に目の前の敵がポリゴンになっていくのを見送った。
「――しゃぁぁぁぁ勝ったぞお前等!」
直後咆哮、達成感や疲労が一気に襲ってくるがまずはコメントの確認だ。
ふ、リスナー諸君はきっと俺が負けるのを期待したのだろうが、俺は勝ったのだ。さぞかし悔しがるに違いない。
[マジでおめでとう]
[負けると思ってた]
[乙]
[レベル結構上がったんじゃない?]
[確かワイルドホークの推奨レベルは25だし、よく勝てたね]
あれ、なんか意外と褒められてないか俺。
いつもだったら負ければ……とか糞がァァってコメントで溢れるか、メシマズとか言われるのに……もしやデレ期?
「お前等も優しくなったんだな。俺は嬉しいぞ」
これが成長って奴か、うん今日はログアウトしたら軽く宴でも開いて鶏肉でも食べよう。
[自惚れなんな]
[根本的なことでアホだよなこいつ]
[まぁ、黙祷]
[あ、やっぱり気付いてないんだ]
[まぁ、レベル上がったしね]
[なぁセツラ、お前状態異常忘れてないか?]
なんだこいつら急に辛辣になって……というかそれより、
「状態……異常?」
なんかあったっけ?
……あれ、そういえばなんで俺は速攻であの敵を倒す必要があったんだ? えっと、確か居合いに対するカウンターで爪を受けて――毒になって?
「あ、やばい今毒じゃん!」
ステータス画面を開けばそこには依然として表示される髑髏マーク。
レベルが十二ほど上がって体力が増えたからまだ生きてたものの、雑談してたせいで結構ギリギリ、残り体力は28程で多分百四十秒で事切れる。
「AGIとVITに振ればいけるか?」
いやでも走ってスタミナ足りなくて死んだら滑稽だし、
こうしてる間にも体力がどんどん減っていき、判断を迫られる。
「もういいや、ステータスポイントを適当に振り分けて――街まで全力疾走!」
俺はいま風になる!
そんな事を思いながらマップを頼りに街へと駆け出し、減っていく体力に心臓をやられながら走り続けた。
————————————
PN:セツラ
LV:15
JOB(職業):侍
HP(体力):69+7
MP(魔力):20
SP(スタミナポイント):36+3
STM (持久力):22
STR(筋力):18
DEX(器用):17
END(耐久力):12
AGI(敏捷):30
INT(知力):8
TEC(技量):19
VIT(生命力):28
LUC(幸運):28
ステータスポイント:0
スキル:居合い――鞘に刀を収めれば発動可能
御霊:まだ生まれていない
————————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます