第2話:ゴブリン戦って大体チュートリアル
目の前にいるのは三体のゴブリン。
ザ・ファンタジーみたいな見た目もこいつらは、過去やったゲーム通りならかなりずる賢い。まぁ、流石にこんなスポーン地点が近い森で強い奴は出してこないと思うが――。
「って危な! 矢が掠ったんだが!?」
思考を続けていると頬を矢が掠めた。
何だ? と思って攻撃された方を見てみれば、そこにいた二撃目を放とうとするゴブリンと目が合った。
[殺意たっか]
[アレは完全にヤル目をしてるな]
[数は四か、最初の敵にしては大変そう]
[悲報:初見配信者ゴブリンにリンチされるw]
笑うなぁ! と口に出そうとしたが、普通にレベル1の俺がこれを相手にするのはキツくないか? こっちはまだ戦闘法を一切知らない初心者だぞ?
とも思ったが、さっき確認したとおりリアル通りに動くって言うのなら、今までプレイしてきたフルダイブ型ゲームとあまり変わらないはず……。
とりあえず走ってゴブリンに近付き、俺は刀を振ってみた。
斜めから振り下ろすように使ってみれば、相手にしている一匹のゴブリンの体を切ることが出来て――そのままそいつは怯んでくれる。
で、視界に表示される相手のHPバーみたいなのが半分ほど減った。
「これで半分か、基準が分からないからどうとも言えないが……」
怯んでいるゴブリンを庇うように二匹が前に出てきたのだ。
これ、仲間意識があるのか? そんなことが頭に過るが、流石にこいつらに負けて初日にデスペナをくらう訳にもいかないので考えるのを後にして敵を倒すことにした。最初は色々検証したかったから一対一が良かったなと思うが、そんな事も言ってられない。
「とにかく倒す――まずはそれだろ」
弓を避けながら俺は敵にだけ意識を向けて集中する。
見る限り相手の武器は棍棒、攻撃力は知らないがスポーン近くで即死ってのはないはずなので数発は受けてもいい。
迫ってくるゴブリン二匹、棍棒片手にジャンプして攻撃してきたのでソレを避ければ、あからさまな隙が出来る。
その隙を狩れば――とも思ったんだが。
「――隙潰しもしてくるのか、連携って厄介だな」
もう一体のゴブリンがその隙をなくすかの如くに俺に攻撃してきた。
絶対初心者が相手するモブじゃねえな……と思いながら、俺は攻撃を仕掛けて刀を相手に掠めた。
それで減ったHPは三分の一ぐらい、相手は怯む素振りはなく反撃してきてダメージをくらってしまった。
「……さっきは怯んだのになんでだ?」
僅かの疑問も口にしながらも視界の端に映るコメントに目を向けた。
[初っぱなこれキツくね?]
[なんで訪れの森でゴブリンが徒党組んでるんだ?]
[もしやレアイベ?]
[敵強くない?]
[ゴブリンアーチャーもいるし珍しい光景]
これ、今のコメントを信じるならゴブリンって基本群れで行動しないのか? それに弓使いのゴブリンもレアらしいし……。
いや、今それを考えてる暇無いな、今の数秒で詰めてきたしコメント見てる暇殆ど無い。それに、さっきから弓を使っている木の上のゴブリンが厄介だし、避けるのもキツくなってきた。
「決めるなら速攻、一発じゃ倒せないならスキル使ってみるか」
確か俺が持ってる初期スキルに居合いというモノがあった。
使い方も乗ってたが、一度刀を鞘に収める必要があるらしい。この状況で鞘に収めるというのは駄目な気がするが、威力も気になるし。
「いや悩んでも意味ないか――使うぞ居合い」
攻撃を避けて出来た隙。
その僅かな時間で刀を鞘に収めれば、右端の方に表示されてるSPが徐々に減っていった。それに加えて刀が鞘から抜けなくなったのだ。
「え、なにそれは」
とりあえず鞘に収めながら攻撃を避ける変態が生まれた気がするが、一定数のSPが減ったところで何かのチャージが終わったかのような音がした。
抜けるって事か分からないが、昔テレビでみた居合い術みたいに刀を抜いてみれば――ゴブリンが二匹一片に両断された。
「強くね?」
何このぶっ壊スキル。
とも思ったが、時間にして四秒のチャージが必要だし割に合ってるのか?
このリアル寄り……というか、この動きやすさを考えるにほぼリアルと言っていいこの場所で四秒の隙は大きいだろう。
それに、このスキルがどこまで通用するかも分からないし完全に未知数だ。
まぁ、とにかく残り二体になれば後は消化試合と言ってもいい、俺はもう一度居合いの威力を確かめるために弓兵の攻撃を避けながらチャージして地上の残る一匹を倒した。
「って逃げるのかよ」
いつの間にか遠くへ逃げていく残った弓兵を見送って俺は一息ついた。
初戦闘はこれで終了、戦利品を見てみれば三つの棍棒と薬草を手に入れていた。
成る程、ドロップアイテムは終わった後に手に入る仕様なのか。意外と多くの収穫を得た戦闘の後、俺は流れ続けているコメントに目を通した。
[戦闘おつー]
[動きキモかったな]
[紙一重で矢を避け続ける変態]
[これが縛りプレイで鍛えられた成果か]
[初見ですが、なんで矢を避けながら戦闘できるんですか?]
「死にまくった故の慣れ……かな」
[……かな――じゃねぇんだわ]
[何も格好よくない]
[年中縛りプレイしてるドMが何か言ってる]
[君、自分から難易度高めてる自覚ある?]
[目隠しマトリックス回避ゲーはおもろかったね]
[確か配信時間二十時間ぐらいやってたよね、この配信モンスター]
[死にげーばっかりやるドMがよぉ]
[きっも]
コメントで見えた質問にちょっと格好つけて答えてみればめっちゃ辛辣な答えが死ぬほど返ってきた。そこまで言わなくていいじゃんと思いながらも、今のは自分でもキモいと思ったので受け取っておく。
「――まぁ、ちゃんとした答え言うと相手が狙ってきてる気配的なもの感知して避けてる感じ、殺気的な?」
それは様々なフルダイブゲームをやってきた故の感覚。
ゲームが現実に近いからこそ死ぬ直感的なモノが磨かれて俺は避ける事が出来るようになったのだ。まぁ人読みに近いからどうなの? って言われたらお終いだが……最近のAIって高度だから割と分かるんだよなそういうの。
[やっぱこいつ頭おかしい]
[それが分かったら苦労しないんですが]
[まあこいつだしね]
「酷くない?」
そんな雑談をしながらも俺は誘いの森? で少しレベリングしていくことに決めて、さっきとは違う一体でいるモンスターを探しながら森を彷徨い始めた。
で……それから数時間後のこと。
「うん、迷った」
そろそろ森を出て街に向かうかーとか思って進み始めたのはいいものの、俺は完全に道に迷って見知らぬ崖の前ににやってきていた。
[ここis何処]
[森の奥に進み続けるお前は滑稽だったぜ]
[どう見ても奥進んでたよね?]
[なんでマップ機能使わないん?]
そんなのあるの?
そういえば説明書にマップ機能が記されていたなと思ってソレを使ってみればマップに表示された俺は森の奥に居た。
それもかなり奥、見た所この先には崖が続いている様で目的地の街はというと完全に反対方向にあるらしい。
「……知ってたぞ?」
[意図は?]
[声震えてるし嘘やろ]
[だうとー]
[迷ったって言ってなかったけ?]
「いやまじだって、ここにくればレアモンスターに会えるかなーって思って」
苦し紛れの言い訳にそんなことを言ってみたのだが、なんかその直後俺の真上から何かが羽ばたく音が聞こえた。
なんだろうか? 初心者救済のタクシー的な? とか淡い期待を込めて空を見上げればなんか別種のウィンドウが出てくる。
【エリアボス、ワイルドホークに挑みますか? 推奨レベル25
・はい いいえ 】
そこにいたのは大きな鷹。
大凡優しくはないような見た目に俺の心が折れかけたが、さっき言った言葉の手前逃げる事は出来ない。
「ほらね!」
[ほらね(震え声)]
[ほらね(強がり)]
[ほらね(絶望)]
「うるせぇやってやんよレベル差が22? 縛りプレイする変態舐めんなVRゥ!」
泣く泣くはいを選ぶことになった俺は、言葉って重要だなぁとか思いながら刀を持ってワイルドホークに挑み始めた。
————————————
PN:セツラ
LV:3
JOB(職業):侍
HP(体力):51
MP(魔力):13
SP(スタミナポイント):24
STM (持久力):16
STR(筋力):18
DEX(器用):17
END(耐久力):12
AGI(敏捷):16
INT(魔知):8
TEC(技量):19
VIT(生命力):13
LUC(幸運):28
ステータスポイント:5
————————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます