第7話【食料庫が転校生にNTRされたので、転校生の彼をNTRます】
「おまっ!? ......一色さん、どうしてそれを?」
周囲に他の生徒たちがいるにも拘わらず、思わずいつも二人でいる時みたいな反応をしてしまい、慌ててバレないようひそひそと小声で問う。
「駅から拝見させてもらったけど、あなた彼女の胸見過ぎ、ドン引きだわ。おっぱい星人なの?」
一色、お前にはわからんだろうが男は生まれた時から皆おっぱい星人なんだよ、と開き直ってみる。
人によっては小さなおっぱい、略してちっぱいが好きだったりサイズの好みは別れるだろうが――って、んなことは今どうでもいいか。
「悪趣味な奴だな。生徒会長様はストーカーがご趣味で?」
「あら、飼い犬が粗相しないか監視するのも主人の役目だって伝えてなかったかしら?」
「誰が飼い犬だ、コラ」
上履きを履き終え教室に向かう途中、一色を慕う生徒たちから次々に挨拶の声が聞こえてくる。
「それにしても初めて見る子ね。転校生?」
「ああ。つい三日前、田舎からこっちに引っ越してきたんだとさ」
「なるほどね。どおりで私の記憶にない顔をしていると思ったら」
「その言い方だと、全校生徒大半の顔は覚えてるみたいに聞こえるんだが」
「大半じゃなくて全員覚えているわよ。もちろん名前も一緒にね」
「...マジか?」
「大マジよ、当たり前じゃない。でなければ、如月君のようなモブ陰キャなんて覚えてるけないでしょ」
モブ陰キャなのは認めるが、こいつに言われるとただただムカつく。
燃費の悪い大食い生徒会長様の食糧庫をしてやってるのはどこの誰ですかー?
この時間、人通りが極端に少ない実習棟に二人で寄り道をし、今日の仕事道具が入ったスクールサブバックをさり気なく手渡された。いつもの授業前に行われるルーティンである。
「いい? 如月君は私のことを何よりも最優先に考えて自動で支援する食糧庫なの。肝に銘じておきなさい」
「へぇへぇ、厳しい飼い主様だことで。いつかハゲるぞ」
「ご忠告ありがとう。あなたこそ、いつか童貞を捨てられるといいわね」
お互い険悪なムードが流れたまま、俺は一色よりわざと少し歩幅を送らせて教室の中へと入って行った。
「おお!
クラスみんなから挨拶を受ける一色に対し、俺にはクラスメイト兼友達未満の大悟だけか......相変わらず寂しいねぇ。
「朝から騒々しい奴だな。何だよ?」
「佐々木が言ってたんだけど、巨乳メガネっ子と一緒に通学してきたって本当か?」
――やれやれお前もかい。
佐々木というのは大悟の親友で隣のクラスの生徒。
こいつとの付き合いで何度か話したことがあるくらいの関係性で、単なる知り合いの知り合いにすぎない。
「間違ってはいないな」
「うっわマジかよ! どこで知り合った? マッチングアプリか?」
自席に向かう俺の後をついてくる大悟がウザすぎる件。
「高校生がそんなもんに手を出すかよ。偶然地元の最寄り駅の近くで困っていた彼女を助けたら、たまたま一緒の高校だったってだけだ」
「胸の大きさはどのくらいだ? 顔は芸能人だと誰に似てる? 綺麗系? 可愛い系?」
荷物を机の横に置き、椅子に腰かけてもなお大悟はしつこく質問を畳みかけてくる。
お前といい一色といい、このクラスの連中は俺を不快にさせる奴しかいないのか?
せっかくの早朝ラッキースケベで幸せ気分な俺に水を差すな。
うんざりしていたところでタイミング良く始業開始の鐘が鳴り、大悟は『あとで聞かせろよ』と一言言い残して己の席に戻った。
数分後。
担任の教師と共に室内へ入ってきた女の子を一目見て、俺のイライラは一気に吹き飛んだ。
日直による起立・礼・着席の合図を終えたあと、彼女は教師から自己紹介するよう指示され、
「......き、今日から転校してきました『
甘噛みしつつもペコリとお辞儀をする巨乳メガネっ子。
その場にいる男子生徒全員のハートが撃ち抜かれる音が、豪快に教室中を響き渡った。
◇
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