cry and cry

@Ruk1x

第1話

小学生から中学生に上がって半年後、母が死んだ。



母が亡くなってから半年後、僕は中学2年生になった。父親と2人暮らし。ほとんど父とは会わない。父は仕事が忙しいのか、夜中にたまに顔も見せるくらいの頻度でしか家に帰ってこない。それでも父は僕を支えてくれているのだ。と、自分に言い聞かせているが、思春期の僕からしたらストレスでしかなかった。


進級して新しいクラス。小学生の頃の唯一の友達と同じクラスになれた。はやと・こうた・こうすけの3人はいつも一緒に居た仲だった。しかひ、中学に上がって別々のクラスになった事であまり一緒に居られなかった。それでも同じクラスになれたのは最近で1番嬉しかったことだと思う。


ある日の放課後、体育館の倉庫の片付けを任された僕は1人でせっせと片付けていた。そしたら、跳び箱の裏になにか人が居た。そこには1人の女性がいた。髪はショート、美しい黒髪、目はウルッとしていて今にでも吸い込まれていかれそうな彼女に何かを感じた。生まれて初めて女性を知りたい。そう思った。


「何をしているの?」

「あぁ、ごめん。探し物をしてたんだ」

「へー」

「もしかして邪魔かな?」

「そんな事ないよ ただ初めて見たなーって..」

「?」

「とりあえず、なにか見つけたら後で教えるよ」

「名前は?」

「あ、えーっと、....」

「あ、ごめん、いきなり名前聞くのは失礼だったよね、」

「そーじゃないの、」

「?」

「なんで、泣いてるの?」


彼女を見た僕は、何故か泣いて居た。彼女を見るとなぜだろう。とても悲しくて嬉しい気持ちになる。ただ、理由は分からない。


彼女は同じクラスの早野さん。吹奏楽部で毎日部活を頑張っているようだ。だれかの為にやるなら全力でそれを仕上げたい。いつもそんな事を言っているのだと言う。彼女の想いは酷く美しい。


去年の6月ちょうど母に癌が発見された時だ。中学1年生の僕はバスケットボール部に所属していた。1年生ながらもスタメンで1戦1戦最後の先輩方と戦って行った。そんな中、県予選決勝戦。

相手の中学は去年から全国大会に行ってる強豪だった。

第1Q 16 12

第2Q 37 48


前半は第2Qで一気に逆転された。ハームタイムチームに暗い雰囲気が流れている時にベンチ側の応援席からは吹奏楽部の演奏が流れた。これを機に一気に叩き込む!監督がそう言った。


第3Q 61 57


遂に再逆転をした。


第4Q 残り2分

78 77

相手チームもかなり追い上げてきた。

こちらが点を決めればあちらも点を決め返す。接戦を繰り広げ第4Q残り12.1秒

87 89


遂に逆転を許してしまった。しかし、まだワンポゼッション差。そんな時、監督は僕にこんな事を言った。


「あやと。最後のシュートはお前に託す」


シューターである僕に最後のシュートを任せたのだ。タイムアウト中作戦を喋っていた監督。それを真剣に聞く選手達。僕はその時監督の話を聞いていなかった。試合再スタート。最後の戦い。そう思ってしまった。そして、残り1秒の所で3Pシュートを放つ。ブザーは鳴っているがボールはまだ空中で弧を描いている。


試合結果は

87 89で負けた。

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