【短編小説】ピクニック家族

京サリ

ピクニック日和







ある晴れた昼下がり。








家族が公園でピクニックをしていた。








「ここは全部が広く見渡せていいなあ」


「そうねえ」





大きな木のした、その家族はレジャーシートの上でただただ公園を眺めていた。





「お母さん見て!ちょうちょ!」





「あらほんとねえ」





「ねえ、お父さあん」





「なんだい?」





「追いかけてきてもいい?」





「あんまり遠くに行っちゃだめだよ」





「わかった!」





聞き分けのいいこどもはレジャーシートの周りでぐるぐるちょうちょを追いかけ回した。








お父さんとお母さんは魔法瓶の中身をカップに注ぎ、青空の下で飲む紅茶を楽しんでいた。











もうどれくらいの時間が経っただろう。








だんだん夜が更けてきた。








しかし家族は公園から動こうとしなかった。








ただただ自然を満喫していた。








そしてそのまま翌日をむかえた。




















日差しが照りつく昼下がり。








家族が公園でピクニックをしていた。








「ここは全部が広く見渡せていいなあ」


「そうねえ」





大きな木のした、その家族はレジャーシートの上でただただ公園を眺めていた。





「お母さん見て!ちょうちょ!」





「あらほんとねえ」





「ねえ、お父さあん」





「なんだい?」





「追いかけてきてもいい?」





「あんまり遠くに行っちゃだめだよ」





「わかった!」





聞き分けのいいこどもはレジャーシートの周りでぐるぐるちょうちょを追いかけ回した。








お父さんとお母さんは魔法瓶の中身をカップに注ぎ、青空の下で飲む紅茶を楽しんでいた。











もうどれくらいの時間が経っただろう。








だんだん夜が更けてきた。








しかし家族は公園から動こうとしなかった。








ただただ自然を満喫していた。








そして再び翌日をむかえた。
























雲に覆われた昼下がり。








家族が公園でピクニックをしていた。








「ここは全部が広く見渡せていいなあ」


「そうねえ」





大きな木のした、その家族はレジャーシートの上でただただ公園を眺めていた。





「お母さん見て!ちょうちょ!」





「あらほんとねえ」





「ねえ、お父さあん」





「なんだい?」





「追いかけてきてもいい?」





「あんまり遠くに行っちゃだめだよ」





「わかった!」





聞き分けのいいこどもはレジャーシートの周りでぐるぐるちょうちょを追いかけ回した。








お父さんとお母さんは魔法瓶の中身をカップに注ぎ、青空の下で飲む紅茶を楽しんでいた。








ごく普通の家族。ありふれた平和な日常。








もうどれくらいの時間が経っただろう。








だんだん夜が更けてきた。








しかし家族は公園から動こうとしなかった。








ただただ自然を満喫していた。








そしてまた、翌日をむかえた。















雨が降りしきる昼下がり。








家族が公園でピクニックをしていた。








「ここは全部が広く見渡せていいなあ」


「そうねえ」





大きな木のした、その家族はレジャーシートの上でただただ公園を眺めていた。





「お母さん見て!ちょうちょ!」





しかしそこには蝶などいなかった。





「あらほんとねえ」





「ねえ、お父さあん」





「なんだい?」





「追いかけてきてもいい?」





「あんまり遠くに行っちゃだめだよ」





「わかった!」





聞き分けのいいこどもはレジャーシートの周りでぐるぐるちょうちょを追いかけ回した。








お父さんとお母さんは魔法瓶の中身をカップに注ぎ、青空の下で飲む紅茶を楽しんでいた。














ごく普通の家族。ありふれた平和な日常。























もうどれくらいの時間が経っただろう。























だんだん、夜が更けてきた。








しかし家族は公園から動こうとしなかった。








ただただ自然を満喫していた。




















そしてまた、翌日をむかえた。



























ある晴れた昼下がり。























家族が公園でピクニックをしていた。








「ここは全部が広く見渡せていいなあ」


「そうねえ」





大きな木のした、その家族はレジャーシートの上で何もかもが失われた公園をただただ眺めていた。





「お母さん見て!ちょうちょ!」


そこにはもう蝶などいない。


「あらほんとねえ」





「ねえ、お父さあん」





「なんだい?」





「追いかけてきてもいい?」





「あんまり遠くに行っちゃだめだよ」





「わかった!」





聞き分けのいいこどもはレジャーシートの周りでぐるぐる虚無を追いかけ回した。








お父さんとお母さんは魔法瓶をカップに傾け、青空の下で空のカップを口に運んでいた。








ごく普通の家族。ありふれた平和な日常。











もうどれくらいの時間が経っただろう。



































この場所に、爆弾が落とされてから。


















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