第2章12節 ダンジョンその3

何対かボスゼリーを倒している時だった。


「プギッ!!?」

「あ?」


目の前に落ちたのは瓶に入った緑色の物体だった。


「何で緑色?ボスゼリーはこんなのも落とすのか?う~ん・・・。」


バッグから瓶詰の水色の物体を取り出して比較する。

だが、オリバーには色の違い以外はわからない。


「・・・まぁ、いいか。どうせ持って帰ってラグに見てもらうしかねぇんだし。」


バッグに戻して先に進む。

次に出てきたのは大きな卵だった。


「・・・何だこれ?」


オリバーは油断せずに戦斧を振り下ろして卵を割ったが、中からは何も出ずに卵の殻は消えた。

何か落ちている様子もなく、本当に意味が分からない。

悩んでも仕方がないと思い、先に進むがすぐに大きな卵は見つかる。

今度はすぐには割らず、色々と調べてみる。

触ってみたが、普段食べている卵との違いは分からない。

バッグに入るのか試したが、見た通り入るわけがない。

持ち上げてみると、重みを感じる。とても中身が無いとは思えない。


「しばらく待ってみるか。」


その場に座って観察してみることにする。

卵の色は白色で、柄はない。動く気配もない。

少し経ったが、敵が近づいてくることも無かった。

さらにパンをかじって待ってみたが、特に変わった様子はない。

だから割って進むことにした。

それからボスゼリーの合間に何度か卵は出てきたが、どれも特徴は無く、割って進んだ。もちろん、中身は無かった。

次の休憩場所では武器だけ磨き、先に進んだ。

進んですぐに、今度は大きなゴブリンモドキが姿を見せた。

大きいゴブリンモドキなので、オオゴブリンモドキと呼ぶ。

後ろからそっと近づき、頭を叩き割って倒す。

不意打ちだが一撃で倒せたことに安堵する。


「大きさは俺と同じくらいか・・・よし。」


次に見つけたオオゴブリンモドキには不意打ちをせず、正面から戦ってみることにした。

奇声をあげて襲ってくるオオゴブリンモドキの攻撃をかわし、横っ腹を叩き斬る。予想通り、悲鳴を上げて距離を取られ、一撃では倒れない。

武器を構えなおし、オオゴブリンモドキに向かって突進する。

傷のせいで反応の遅れたオオゴブリンモドキはオリバーの一撃を喰らう。


「ケギャアァッ!!?」


野太い悲鳴を上げて倒れる。

死体は消え、その場に金貨が落ちる。


「金貨!?」


慌てて拾い上げる。


「ウキキが見せてくれた物に似ているな。ということは、これは人間たちが使う貨幣というもので間違いないのか?」


リザードマン族たちの村でも貨幣は使うことが出来る。

だが基本的に村の中では物々交換の為、見ることはない。

ラグは行商として外に出た時に使っていると言っていた。


「何でこんなもんがオオゴブリンモドキから落ちたんだ?まさか!?」


辺りを見回し、あるものを探す。

だが、木々が広がっているだけで何も無い。


「・・・人間の死体でもあるかと思ったが、無いか。」


疑問は残るが、先へと進む。

その後も何度かオオゴブリンモドキを倒したが、金貨が落ちることはなかった。



オルスウォート王国城壁前。

難民たちがあつまる宿営地にフードを被った者が歩く。

すれ違う人々は怪しい雰囲気に一瞬だけ見るが、その後は何事も無いように無視する。

宿営地の中を歩いていき、目的の場所につく。

そこには大きな馬車が何台もあり、身なりの良い人たちが集まっている。

その中で一番裕福そうな太った男性に近づく。

葉巻を吸っていた男性は訝しんだ様子で声をかける。


「何か御用かな?生憎今は商売はして・・・。」

「あちしだよ。ムットさん。」


チラリと見せた顔に、ムットは驚く。


「おじょ!?」


慌てて自分の口を塞ぎ、目だけでの馬車の中に入るように促す。

馬車の中に入ると、フードを取る。

その正体は、ウキキだった。


「お嬢、お久しぶりですなぁ。お兄様はお元気ですかな?こちらはお陰様で懐も潤って・・・。」

「殺されたんよ・・・人間に。」

「・・・。」


ウキキの言葉にムットは表情を崩さない。

だが、沈黙から驚いていることが伝わる。

言葉を探したが、ムットには適切な言葉が見つからず素直に聞いてきた。


「人間に、ですか。何かの間違いではなく?」

「間違いないんよ。おぃは殺された、人間の・・・黒騎士部隊に。」


黒騎士部隊という言葉に、ムットの頬を汗が伝う。

動揺を隠すように深呼吸をし、確認するようにウキキに聞き直す。


「・・・お間違いなく、ですか?」

「うん。」


ウキキの言葉に、ムットは背中に嫌なものを感じた。




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