第2章11節 ダンジョンその2

あれからどのくらい経ったのだろうか。

ダンジョンの奥へ奥へと進んでいるが、終わりが見えない。

また、空の色が変わらないことからダンジョンの中では昼夜は無いらしい。

かなり歩いたが、未だに昼なのが証拠だろう。

正直に言えば、感覚が狂いそうだ。

睡魔に襲われても、空が明るいと寝た気がしないし、睡魔を無視することも出来ない。

腹が減ればパンをかじるが、果たして正しい時間に食事をとれているのかもわからない。

幸いなことは、モンスターだけは変化していくことから奥へは進んでいると思えることだ。

ゴブリンモドキを倒し続けていると、今度はゴブリンモドキが三人集まり、人間のようなパーティーを形成していることが多くなった。まとめてゴブリンパーティーと呼ぶ。ゴブリンパーティーは基本的には戦士と思われるゴブリンモドキと魔法使いと思われる杖を持ったゴブリンモドキ、そして弓を持ったゴブリンモドキの組み合わせがほとんどで、時々戦士が二匹だったり、弓を持っているのが二匹だったりする。何故か杖を持ったゴブリンモドキは必ず一匹しかいない。

複数匹だから用意に倒せはしなかったが、苦戦するような相手でも無かった。

次に登場したのは巨大な芋虫だった。これに関しては何か言えることはない。

攻撃も単純だが、鱗に覆われているからか動きが鈍足で相手にならない。一応、オオムシと呼称する。

オオムシの次に現れたのは巨大な蝙蝠だった。こいつは厄介だった。

常に空を飛んでおり、遠距離武器を持っていないオリバーはそこら辺に落ちていた木の枝を拾っては投げ、拾っては投げの繰り返し。攻撃を仕掛ける際には近づいてくるのでそれを待つというのも有りだったが、この巨大な蝙蝠は遠距離攻撃を持っていたのだ。口から放たれる空気の塊は殺傷能力こそ低いが、かなり鬱陶うっとうしかった。こいつのことはコウモリオバケと呼ぶことにした。


「あれから進んでまた池か。どうやらこの池が区切りらしいな。」


池の近くに腰を下ろし、武器を磨き始める。

ラグが武器の手入れは重要だと言っていたからだ。


「爺さんから聞いていたダンジョンとはかなり違うなここは。敵は一種類しか出てこねぇし、高頻度での休憩場所。おまけに・・・。」


自分の手を見つめながら開いたり閉じたりする。

何かを確認し終わると、また磨き始める。


「なんでかここは眠気はあるのに疲れが出ねぇ。むしろ体の調子が良いほうだ。まだまだ奥へと行けると勘違いしちまいそうだ。」


磨き終えた武器をゆっくりと置き、バッグからパンを出して齧りだす。


「ただ食事は何とかしなきゃだな。流石にパンにも飽きてきた。だが、ここの敵は倒すと消えんだよなぁ。残ったとしても・・・。」


バッグからこれまで拾ったものを広げる。

ナイフのようなもの2つ、ゴブリンモドキが持っていた杖が3つ、弦の切れた弓が2つ、オオムシから落ちた鱗が6つ、コウモリオバケの羽の部分4つである。


「何に使えるか知らねぇけど、勿体ねぇから拾っちまったな。羽なんか何に使えるんだ?」


試しに齧ってみたが、味はない。

頑張れば喰いちぎれそうだが、かなり頑丈だ。


「やっぱり食い物じゃねぇか。何かねぇのかな・・・そう言えばミズゼリーからは何も拾えなかったな・・・。」


一瞬、ダンジョンを戻って見ようかと考える。

だが、すぐにその考えを捨てる。


「欲しけりゃまた入ればいいだろ。今は先へ進もう。」


腹を満たし、武器をもって先へと進む。

その考えが正しかったとすぐにわかった。


「・・・デケェな。こいつのことはボスゼリーと呼ぼう。」


先に進んですぐ、巨大なミズゼリーと遭遇したからだ。

警戒心が無いのか、眠っているように見える。

気配を消して近づき、戦斧を振り下ろす。


「プギッ!?」

「うおっ!?」


攻撃は当たったが、ボスゼリーは消えなかった。

むしろ距離を取られた。


「ここからはこいつでも一撃は無理か。」


先程の攻撃で怒ったのか、水色の体が真っ赤に染まる。

武器を構えた瞬間、巨大な水の塊が目の前に飛んでくる。

咄嗟とっさに避けたが、あった場所が嫌な音を立てながらドロドロになるのを見てしまう。


「・・・当たれば一撃はこっちか。」


そう判断してから即座に動く。

もう一度ボスゼリーを斬れば、「プギッ!!」という悲鳴と共に消える。

今の動きに自分自身が驚く。


「・・・俺ってこんな動きも出来たのか?」


今までの自分の体では無いような気がして不気味だったが、先へと進む。

もちろん、落ちていた瓶詰の水色の物体を拾って。

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