第2章10節 ミミとウキキの過ごし方

「ここをこうして・・・こう、かな?」

「おやおや。ミミちゃんはすごいワネ~。流石はコボルト族ってことカシラ?」

「えへへ~。」


オリバーが訓練に精を出している頃、ミミはリザードマン族の主婦たちに裁縫や料理を教わっていた。

その中でも特に裁縫の上達は凄く、もはや教えることは無いとまで言われてしまっている。


「コボルト族は手先が器用って話は本当ダッタノネ~。普通は一年以上特訓が必要なのにネ~。」

「ダナさんたちはたくさん練習したってこと?」

「ええ。私も母も不器用だったから苦労シタワ~。他の人も苦労してると思うワヨ。元々リザードマンは大雑把な性格の方が種族的には多いノヨ。だからこういう針仕事は苦手なのヨ。だからミミちゃんが手伝ってくれて助かるワ~。」

「うん!これもお母さんになるための修行だからね!どんどん手伝うよ!」

「あらあら。とても素敵ネ~。種族を超えた愛、いつ聞いてもカッコいいわヨ~。」

「うん!だから色々お話も聞かせてね?」

「もちろんヨ~。確か昨日はゴブリン族の話をしたワネ。覚えてるカシラ?」

「うん。確か昔は其処ら中にゴブリン族が溢れかえっていたのに、今ではほとんど見ることの無い種族でしょ?私も村長に聞いてゴブリン族の事は知ってたけど、見たことないもん。」

「ええ。ゴブリン族は繁殖能力が異様に高い種族で、どんな種族の雌でも孕ませることが出来たノヨ。ただ、ゴブリン族は何故か人間族の雌を好む習性があってネ。今では人間は最強の種族だからゴブリン族は数を減らしてしまったノヨ。だから私も見たことは無いワ。でも、私たちの村長も一度だけ見たことがあるって言っていたから滅んではいないと思うワ。」

「うん。それで今日はどんな種族の話しをしてくれるの?」

「そうネ~・・・じゃあマーマン族の話しはどうカシラ?私も一度だけあったことがあるノヨ~。」

「うん!教えて教えて!!」


傍から見たらその光景は親子の会話みたいに見えたかもしれない。

その一方でウキキもまたリザードマン族たちから情報を集めていた。


「・・・そう、ですか。見てへん、ですか。」

「ああ、すまナイナ嬢ちゃん。」

「い、いえ!。」


ウキキはリザードマン族たちから兄の情報を集めようとしていた。

だが、誰一人として見ていないことしかわからなかった。


「はぁ~。」

「どうしましタカ?ウキキさん。」

「あ、ラグさん。」


ウキキが落ち込んで座っていると、ラグが声をかけてきた。

ウキキはラグに事情を話し、ラグにも聞くことにした。


「ふむ。お兄さんヲ・・・。残念ながらエンモン族には会ったことがありますが昔の事ですので、貴方のお兄さんだとは思えマセン。申し訳ナイ。」

「ううん、いいの。きっとおぃは黒い鎧の集団に攫われたんよ、きっと。だからもう・・・ううぅ・・・。」

「な、泣かないでクダサイ!?私が困ってしまイマス!?」

「だってお兄ぃはもう・・・死んじゃってるんだもん!!」

「そんなことは・・・うん?黒い鎧の集団?今、そう言いまシタカ?」

「え?う、うん。そうだよ。黒い鎧の集団、あちしたち旅商人で、次の村へ向かう途中で襲われたんやもん!間違いないんよ!」

「・・・だとしたら奇妙ですネ。」

「奇妙?どういうことなの?」

「黒い鎧、それは人間族の王族が抱えている武力の象徴デス。確か・・・そう!!オルスウォート王国の精鋭部隊だったと思いマス!」

「オルスウォート王国・・・黒騎士部隊・・・そう・・・ですか・・・。」

「ウキキさん?」


ウキキの目が一瞬だけ光を無くす。

その一瞬を、ラグは見逃してしまった。

ラグがウキキの顔を除けば、無理矢理作った笑顔が見える。

申し訳ない気持ちになったラグは頭を下げる。


「申し訳ナイ。これぐらいしかわからないデス。」

「ううん。十分だよ。これで、あちしの目的も見えてきたから・・・。」

「え?」

「ううん!何でもない!ね、ラグさん黒騎士部隊についてもっと知ってること教えてや!」


何か言い知れぬ嫌な予感がラグの背中を通った気がしたが、気にしないことにした。

だから、話してしまった。黒騎士部隊について、ウキキに。

それが後にどんな結果につながるかも知らずに。


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