第2章9節 ダンジョン
「・・・て・・・イ・・・きて・・・サイ・・・。」
「・・・う?」
「起きてくだサイ!」
「・・・っ。ここは?」
「ここがダンジョン、オリバーさんの新たな修行場デス。」
目の前に見えるのは森の入り口で、特に何か変化があるようには見えない。
辺りを見回したが、草原が広がっているだけだ。
ぼんやりする頭を覚醒させるように頬を叩き、オリバーは起き上がる。
「この先にダンジョンがあるのか?」
「いえ、ここからがダンジョンなのデス。」
「そうなのか?俺には森にしか見えないんだが・・・。」
「傍から見ればそうデショウ。ですがここはダンジョンであり、“
「誘いの森・・・。」
「信じられないでしょうが入って見ればわかります。どうぞ、オリバーさんお入りくだサイ。」
ラグから食料と武器を受け取り、オリバーは先に進む。
森に入った瞬間、視界が数秒歪んだ。
「・・・っ!?マジか・・・。」
歪んだ視界が戻ると、森の迷路が姿を見せる。
左右に道は無く、空も木々で覆われている。
振り返って見ると、一歩しか進んでいないのに外が見えない。
試しに横に移動してみようと思ったが、すぐさま見えない壁にぶつかる。
触ってみると、感触があるような無いような気味の悪い感じがした。
「真っすぐ先に進むしかないようだな。」
立ち止まっていても仕方が無いのでとにかく進むことにする。
一歩、また一歩と進むにつれて奥がゆっくりと見える。
不思議な感覚に慣れないながらもダンジョンの奥へと向かう。
しばらく歩くと、何処からともなく水色の物体が姿を見せる。
「なんだこいつは?」
プルプルと揺れるゼリー状の物体はとおせんぼうするように道の真ん中にいる。
見たことの無い物体にオリバーの判断は遅れる。
「プギッ!!」
異様な鳴き声と共に高速で水の弾が放たれる。
「ッ!!?」
ただ、狙いは悪いようで水の弾はオリバーには当たらなかった。
そのおかげで武器を構えることが出来た。
「何だか知らないが、こいつは敵ってことだな。」
ゆっくりと距離を詰める。
だが、水色の物体は動く気配がない。
疑問に思ったが、戦斧を振り下ろす。
プチっという音がして水色の物体は潰れる。
「・・・やったのか?」
戦斧をそろりと避けると、水色の物体は姿を消している。
瞬時に当たりを見回したが、何も無い。
「・・・よくわからないがこれでいいってことか?」
釈然としないが、何も起こらないのでオリバーは先に進むことにした。
それから何度か水路の物体は出てきたが、どれも戦斧で潰すと何もなくなる。
そんなことを繰り返していると、小さな池が見えてくる。
何故だが其処は安心する気がする。
「あまり疲れてはいないが、一応な。」
池の近くに腰を下ろし、パンを取り出して食べる。
頭の中で先程までのことを整理する。
「あの水色の物体・・・とりあえず“ミズゼリー”と呼ぶか。あいつは何なんだろうか。水の弾以外は攻撃してこないし、こっちの攻撃を避けようともしない。潰した感触はあるのに、そこには何も無い。不思議だ。これがダンジョンというものなのだろうか。」
パンを食べ終え、池の水を少し飲み立ち上がる。
改めて武器を構えなおし、オリバーは先に進んだ。
「う~ん・・・。」
しばらくの間、ミズゼリーを倒しながら先に進むと分かれ道が現れた。
右も左も先が見えず、どちらに進むのが正しいのか悩んでしまう。
判断材料が無いので、とりあえず勘で右に進む。
少し進むと、不気味な声が聞こえてくる。
「ケギャギャ。」
泣き声に注意を払いながらゆっくりと進むと、そいつは姿を見せる。
緑色の上半身に、下半身は毛に覆われている。
丸い耳につるつるの頭、手にはナイフのような物を持っている。
話しに聞いたゴブリンとは似ているようで少し違う。
「とりあえず先手必勝だな。」
気づかれないギリギリまで近づき、一気に戦斧を振り下ろす。
「アギャ?」
気づかれた時には戦斧は振り終えている。
悲鳴を上げることもなく斬られたそいつは姿を消す。
カランっと手に持っていたものだけがその場に残る。
「・・・終わったか?」
辺りを確認し、何もいないことを確認してからそれを拾う。
ナイフのようなものは刃の部分がギザギザで切れ味は悪そうである。
「・・・あいつは“ゴブリンモドキ”と呼ぶことにするか。」
ナイフのようなものを荷袋の中にいれ、先に進む。
ダンジョンの奥はまだまだ見えない。
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