第2章7.5節 勇者、それに会う
「・・・ここが最奥でいいんだよな?」
「ええ。ここまでに分かれ道はありませんでしたので。」
「なぁ、エルレイヤ。」
「何でしょうか勇者様?」
「ここを見て、お前はどう思う?」
「すっごく広い場所です勇者様。」
「うん、そうだよな。んで、伝説の剣は?」
「何処にあるんでしょうか?見当たりませんね。」
「見当たりませんね?っじゃねーよ!!!は?ここにあんじゃねぇのかよ!!」
「あくまで噂だろ?ねぇもんは仕方ねぇじゃん。」
「そうですよ勇者殿。エルレイヤ殿を責めても事実は変わりませんよ。」
「はぁ~。俺の苦労が・・・。」
「いやいや勇者様は何もしてないじゃん。主に命令してただけで・・・。」
「頭を使った、はい論破!」
「んぐっ!?」
「勇者、大人げない。」
「うっせぇ!」
「とりあえず調べてみましょう。もしかしたら何か仕掛けがあるかもしれませんから。」
エルレイヤの言葉にマリヤたちは調べ始めるが、勇者はその場に腰を下ろす。
誰かがため息を吐き、皆は調べることに専念する。
だがその広間には何の仕掛けもなく、本当に広いだけであった。
「これだけ調べても何もないなら噂は嘘だったってことでしょうか?」
「そうですね。ここには伝説の剣はないということでしょう。」
「ま、ゴブリン共も簡単に倒したし、良いんじゃねぇの。」
「そうだな。近隣住民の安全が守られただけでも良い結果だ。」
「勇者、不貞腐れてる。」
イスラの指の先では文句ありげな勇者が睨んでいる。
その顔を見て、マリヤは頭を掻きながら息を吐く。
「おいおい気に入んねぇのは分かんだけどよ、誰のせいでもねぇだろ。噂はあくまで噂だ。あればラッキー程度だろ?」
「・・・。」
「勇者殿、そうお怒りになるのは・・・。」
「・・・誰かが見てるぞ。」
「え?」
勇者の視線の先に全員の視線が誘導される。
そこには誰もいない。
「誰もいませんが・・・。」
「いや、見てやがる。お前は誰だ?」
「・・・クヒヒ。」
「なっ!?」
マリヤの驚きを無視するように、勇者の問いにそれは不気味な笑い声で答える。
その声は広間のいたるところから聞こえ、何処にいるのかわからない。
だが、勇者の目は忙しなく動くそれを目で捉えている。
「ほぉ。我をその
勇者の視線の先に突然影のような黒い靄が現れ、その中から何者かが姿を見せる。
頭には歪な角を生やし、揺れる紫の髪はあるものを連想させる。
真っ黒なドレスのような服の背中から生える異形の翼の形を見た時、エルレイヤはボソッと言う。
「・・・悪魔。」
その言葉に応えるように悪魔は口角を上げた。
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