第2章6.5節 勇者、駆逐する

「うそ、だろ・・・。」

「・・・信じられない。」

「こんなことって・・・。」

「にわかには信じがたいが、目の前のこの光景を見てしまうとな。信じざるを得ないだろう。」

「うふふ。流石は勇者様です。」


洞窟内のいたるところで、ゴブリンたちは首を抑えるしぐさをして倒れている。

その中にはゴブリンジェネラルと呼ばれる固体やゴブリンメイジと呼ばれる固体、ゴブリンキング、ゴブリンクイーン、ゴブリンジャック等々多種多様のゴブリンたち全てが等しく横たわっていた。


「ん~生きてるヤツはいなそうだな。うし!そんじゃ伝説の剣ってのを探そうぜ!」

「いやいや。いやいやいやいやいやいや!!?は!?何がどうなってんだよ!!?ご、ゴブリン共が何でだ!!!?」

「・・・信じられない。説明を求む。」

「私も知りたいです!!どうしてですか!!?」

「勇者殿、自分もご説明願えれば・・・。」

「あ~・・・めんどくせぇなぁ。えっとな、生物ってのは空気、つまり酸素ってのが生きるのに必要でな?」

「んなことは知ってんだよ!!何でゴブリン共が死んでいるかの説明をしろってんだよ!」

「ったく、だから!その酸素を無くしたんだっての!いいか良く聞け!俺がやった作戦はこうだ。洞窟の入り口に大量の焚火を設置して、杉・・・あ~なんかよく燃えて煙が良く出る木の葉っぱを同時に燃やしたんだ。最後に入口を土壁で塞いだ。こうするとだな・・・。」

「な、なるほどです!!酸素が無くなって息が出来なくてゴブリンたちはみんな死んだってことですね!」

「あ~・・・ま、そんなとこだな。」

「信じらんねぇ・・・。」

「信じられないが、現実にこの目に映るこの光景が真実なのだろう。」

「流石は勇者様です。我々では想像すら叶わない叡智をもっていらっしゃるのですね。」

「すごい。」

「ただの変態だと思ってたぜ。」

「その変態の上でよがり狂っていたのは誰だよ?」

「うっせー!!!!」

「さて、では参りましょう。この洞窟の奥にきっと伝説の剣があるはずです。」


エルレイヤの言葉に全員が頷き、奥へと歩き始める。

その奥で何ものかが待ち受けていることを知らずに。


「・・・たいしたものだ。まさかあのような方法でゴブリン共を駆逐するとはな。尻尾を撒いて逃げると踏んだんだがな。腐っても勇者だということか。クックック。面白い、面白いぞ勇者!会うのが実に楽しみではないか!我の知らぬ叡智、その全てを貰おうぞ!」


暗闇の中でそいつは、微笑んだ。

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