第2章5.5節 勇者、作戦を立てる

「ごぶりん?」

「そう。洞窟の中はゴブリンの巣窟。それもかなりの規模。」

「それは・・・困りましたね。」


エルレイヤたちは嫌な顔を見せる。

それがユウヤには理解できていない。


「あ~・・・その、ゴブリンってのはアニメ・・・いや、物語なんかに出てくるあれか?緑色の小人みたいなヤツ。」

「あにめ?物語、ですか?そのような物語もあるでしょうが、私は存じ上げていません。ですが、緑色の小人という認識で間違いはありません。」

「・・・弱いんじゃねぇの?」

「は?冗談だろ?お前マジで言ってんの?」

「は?」

「勇者殿のゴブリンに対する認識が如何ほどか知りませんが、ゴブリンは決して弱くはありません。厳密に言えば、一匹だったら少し経験があれば新米冒険者でも余裕で殺せます。ですが、今回はゴブリンの巣です。規模の大きいということは、様々な種類のゴブリンがいることも想定されます。ゴブリンは、群れただけでSランク級の依頼です。」

「・・・マジかよ。」

「マジもマジだ。チッ!めんどくせーことになったな。どうすんだよエルレイヤさんよぉ!」

「そうですね・・・近くに冒険者協会はありますか?」

「あるにはありますが、おススメできません。あそこの協会長は融通が利かないことで有名ですので。その次に近い場所になると・・・かなり距離がありますね。」

「俺たちで倒せばいいんじゃねぇの?」

「は?お前はまた考えなしに言うなぁ。」

「勇者殿、先程も言いましたがこの洞窟の攻略にはSランクの冒険者パーティーが必要です。我々も腕に覚えはありますが、おそらく誰かは失うでしょう。」

「いるんだよなぁ。ゴブリンを雑魚と勘違いして無茶して死ぬ奴。まさか勇者もその一人だったとは。」

「・・・お前は馬鹿か?」

「あ゛?テメェの方が馬鹿だろう?あ゛?」

「イスラ、洞窟の入り口はここ以外にもあるのか?」

「何無視してんだテメェ!!」

「お前こそ黙ってろ。今俺はイスラと話してんだよ。」


殴りかかろうとしているマリヤをミルダが抑える。

テナはため息を吐き、エルレイヤは笑顔を崩さない。

その横でユウヤはイスラに話を聞く。


「他には無いと推察する。しかし、絶対ではない。」

「窓みたいな場所はあったか?」

「洞窟内は篝火かがりびによって照らされていた。その可能性は低い。」

「よし、んじゃ次はテナ。」

「は、はい!?」

「魔法で土壁を作れるか?この入り口を塞げるようなやつだ。」

「出来ますが、何の為に?」

「なら、あの作戦で行こう。」


勇者の笑みに、誰も何をするのかわからなかった。

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