第2章2.5節 勇者、復活する。
「目覚めましたか、勇者。」
「・・・。」
修道服を身に纏った女が安心した目で見てくる。
起きたら目の前に王様がいるとばかり思っていたが、どうやら違うらしい。
見渡せば古ぼけた教会の中で目を覚ましたことが理解できるし、修道服の女の後ろでは親らしき二人が涙を流して喜びあっている。
「・・・ここは何処だ?・・・ッ!!?」
低い声で威圧しようとしたが、高い声が出る。
確かめるように両手を見れば、あの時見た小さな手がそこにある。
「混乱するのは無理ありません。貴方は一度死に、勇者として復活することが出来たのです。」
「勇者としての復活?一度死んだ?誰が?俺が?訳の分からねぇ事ばっか言ってねぇで説明しろ!!」
「畏まりました勇者様。貴方様の現在をお話します。」
修道服の女が言うには、この体の元々の持ち主は森で山菜を集めている最中に“グランドベアー”とか言う魔物?に襲われたらしい。
そして命を落とした。名前はユウヤ、年齢は10歳らしい。
泣きつかれた両親と思われるこいつらの為に修道服の女は“勇者の祈り”とか言う胡散臭いものに手を出したそうだ。
その結果、勇者として復活した。
「お前らは狂ってるのか?死んだ奴生き返らせて何がしたいんだよ!」
「怒るのは無理ありません。ですが、これは神様の御導きなのです。」
「は?神だって?」
「ええ。本来亡くなるべきだったユウヤ様、ですが神様は貴方様に奇跡をお与えになったのです。そして、勇者として復活した貴方様にはこれから試練が与えられるでしょう。」
「勝手に蘇らせた挙句に試練?ふざけた神だな。」
「神様は貴方様に必要だからこそ試練をお与えになるのです。」
「やらねぇっつたら?」
「いかようにも。試練を乗り越えるかどうかは貴方様次第です。神様もそれは承知の上でしょう。ですが、何が起こるかはわかりません。」
「ハッ!脅しか?俺は死ぬこともウェルカムなんだが?」
「うえるかむ?その言葉の意味は存じ上げませんが、貴方様を脅しているわけではありません。」
「はぁ~。テメェと話しても意味がねぇんだろうな。結局テメェも神の御意思は知りませんってか。」
「申し訳ありません勇者様。ですが、私に出来うることは何でも致しましょう。」
言われて修道服の女を見る。
金髪碧眼に顔立ちは美人、おまけに服の上かでもわかるほどのスタイルの良さ。
行為に及びたいが、この体では無理だろうと早々に諦める。
「・・・とりあえず、俺はどうすれば強く成れる?」
「はい、私がお教えします。」
嬉しそうに笑う修道服の女を、今は騙すことに勇者は決めた。
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