番外編その2 少年の絶望

目の前の光景に、少年は絶望する。


「ハハハ!クタバレッ!糞オーガ!!」


人々の歓声で包まれる中、フードから覗くその瞳には希望が見られない。

少年は、ただ笑い声に誘われてきただけだった。

一方的になぶっている人間が少年の目には怖く、狂気じみていて、何よりも悪い敵を殺すことに何の抵抗もない悪人のようなその姿に、少年は震える。

その魔族が何をしたのか。人間に恨まれるようなことをしたのか。

何も知らないが、関係ないようにも見える。

倒れて一方的に笑いながら斬り刻まれている魔族を助けたいのに、自分にその力が無いことがもどかしく思う。

ただ、生きているだけなのに。

魔族をいたぶる人間がまるで正義のヒーローであるかのように人々に映っているのが苦しい。

どうしてこんなにに酷いことが出来るのか。


「モ、モウ・・・ヤ、ヤメテケロ・・・。」

「うるせぇんだよ!テメェはさっさと死ねッ!!」


魔族のが悲鳴を無視し続ける人間に吐き気を覚える。

少年の目には魔族の悲痛な顔が映り。彼に手を差し伸べたい気持ちが募る。

けど、人間の圧倒的な力の前では助けることはおろか、自分まで殺されかねない。


「・・・。」

「おいおい?もうくたばったのか?糞弱よえぇじゃん!雑魚糞オーガ!」


息絶えた魔族に浴びせる罵詈雑言は少年に怒りを覚えさせる。

けれど、少年は目を逸らし、コロセウムを後にする。


「殺す・・・この国の人間は一匹残らず殺したやるっ!!」


憎悪が少年を変え、新たな力を授けるかもしれない。

これまで抑え込められてきた何かが解放されたような、そんな感覚を少年は無意識に感じ取る。


「まずは力を蓄えよう。」


人々にとって、少年は今後新たな脅威になるやもしれない・・・。

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