第1章11話 手掛かり
「今は混乱していて考えるのが難しいかもしれないが、ハッキリと言わせてもらう。」
「なぁに?」
「俺たちはお前の話しを信じようと思う。」
「信じるよ!」
「だとするなら、身近に危険があるかもしれない今の現状は好ましくない。俺たちは先を急がせてもらう。残念だが、お前の助けにはなれない。」
「なれない!・・・え?」
キョトンとした目を向けてくるミミ。
何を言いたいのか何となくわかるが、俺たちは超人ではない。
誰も彼も助けてなんていられないんだから、ミミには理解してもらいたい。
「それは・・・その通りなんよ。」
「だが、ついてくるのに対しては拒みはしない。好きにすればいい。」
「一緒に行こう!ウキキちゃん!」
「・・・。」
頭の中に浮かぶ兄の笑顔。
ほんの少し前までいつもの変わらない旅の風景。
目を閉じればこれが夢なんじゃないかって思えてしまう程、今は何もない。
「・・・ついていってもいいん?」
「もちろんだよ!一緒に行こう!」
「ならすぐに出発だ。」
太陽が沈み、月が昇り始めた。
今日中に行ける所まで行こうと考えていたのだが、誤算が生じた。
ウキキは夜目が利かないらしい。
魔族のほとんどが夜目が利くのだが、エンモン族は夜目が利かないらしい。
その状態で進むのは危険と判断したミミに止められてしまったのだ。
最初にも言った通り、関係なく進もうと思ったが、流石にミミが泣きそうになりながら止めてきたらどうしようもない。
「す、すいません・・・。」
「気にしな~い、気にしな~い。旅はゆっくりじっくりするもんだよ~。」
「で、でもぉ・・・。」
「気にするな。何処かで休むことは考えていたんだ。それがここだっただけだ。」
「すいません・・・。」
「それよりもこれ、美味いな。」
「でしょでしょ!干し肉はそのまま食べても美味しいけどさ、味気ないじゃん。だから結構考えたんだよね~。どうすれば美味しく食べれるか。で、これが出来たの!」
「これは・・・オランジル?」
「ピンポーン!大正解!」
「おらんじる?って何だ?」
「オランジルはオランジルだよ?木の実の仲間!」
「・・・。」
「お、オランジルって言うんは、酸味が少しだけある果実で、そのままでは毒があって食べれないん。けど、ジャムにすると美味しいんよ。」
「さんみ?」
「えっと、酸っぱいってことなんよ。」
「なるほど・・・。良くはわからなかったが、美味いな。」
「でしょでしょ!」
「・・・あの、あちしから質問してもいいん?」
「いいよ?なになに?」
「俺も構わない。」
「その、お二人はどのような目的で旅を?」
「えっとね、リザードマンを探してるの!」
「り、リザードマン?」
「魔王について知りたくてな。先代の魔王はリザードマンだったんだろ?なら何か知ってるかもしれないからな。」
「魔王について・・・あちしは知らないん。」
「身内から魔王について何も聞いてないのか?」
「聞いてないん。」
「リザードマンのことは?」
「あちしは知らないん。けど、お兄ぃなら・・・知っていたかもしれんのよ。」
「本当か!?」
「う、うん。お
「へ~凄いんだね!」
「もう死んじゃったんよ。魔族狩りに巻き込まれて、ね。」
「あ、ごめんね!?悲しいことを思い出させちゃって!?ごめんね!!?」
「ううん。いいんよ。悲しいんけど、心の整理は出来たんよ。」
父親が知っているから兄も知っている可能性がある。
もしこれが本当ならウキキの兄を探すべきだが、正直殺されている方が納得できてしまう以上、危険の方が大きくなってしまう。
だが、手掛かりがあるかもしれないのにみすみす逃すのもどうなんだろうか。
生きている可能性も否定できないのなら探すべきなのではないだろうか。
「ウキキ、他に家族とか商売仲間はいないのか?」
「いないんよ。お父ちゃんはあちしとお兄ぃを一人で育ててくれたん。だから他の仲間とかは知らないんよ。お兄ぃなら知ってるかもしれないんけど。」
「そのお兄さんもどこにいるかわからないもんね。心配だよね。」
そうすると、やはりウキキの兄を探すべきか。
生きている可能性に賭けるのか?生きていると信じれないのに?
だがこのまま当てもなく旅を続けても、リザードマンにたどり着くのはいつになるのかわからない。
なら・・・。
「兄を探すべき、か。」
生きている可能性に賭けて。
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