番外編その1 少年の夢

少年の、キラキラした目は夢に向かって輝いている。


「ハハハ!クタバレッ!糞オーガ!!」


この少年もその一人である。

少年は、何度も何度も両親にお願いをし、遂にコロセウムに観戦に来れた。

戦う冒険者は少年の目には強くて、たくましくて、何よりも悪い敵を倒すヒーローのようなその姿に、少年は興奮を感じる。

その冒険者がどのような人物なのか。どんな人生を歩んできたのか。

そんなものは関係ない。

倒れて一方的に斬り刻まれているモンスターが死のうが生きようが、それも関係ない。

ただ、悪いモンスターを正義のヒーローである冒険者が倒す。

その一点だけで少年の目は輝き続けている。


「モ、モウ・・・ヤ、ヤメテケロ・・・。」

「うるせぇんだよ!テメェはさっさと死ねッ!!」


モンスターが慈悲を懇願しているのにそれを無視し続ける冒険者。

少年の目にはモンスターの懇願など映らず、冒険者が圧倒的な力で悪いモンスターを倒しているようにしか映らない。


「・・・。」

「おいおい?もうくたばったのか?糞弱よえぇじゃん!雑魚糞オーガ!」


息絶えたモンスターに浴びせる罵詈雑言。

それも少年の目には映っていない。


「いつか僕も冒険者に・・・。」


親の心を知らず、モンスターの心も知らない少年。

彼がこの先どんな冒険者になるのか、想像は簡単だろう。


「まずはスライムを殺そう!」


人々にとって、モンスターは何処まで行ってもモンスター・・・なのである。

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