第63話 コミカライズ37話 公開予告SS
「おーおーおーおー!」
「まぁまぁまぁまぁ!」
メーアバダル領東端、森の中の関所の主が住まう小屋で、主であるクラウスとカニスがそんな声を上げる。
「格好よく書けてるじゃないか!」
「格好よく書けてるじゃないですか!」
更にそんな声を上げる二人の目の前にはコミックの原稿があり……そこに描かれたクラウスの活躍を二人は絶賛しているようだ。
そしてそんな二人の目の前にはユンボがいて……ユンボが「へへん」と言いたげに鼻をこすると、クラウスとカニスは微笑んで……それからとても楽しげに原稿を読み耽る。
そうして少しの時間が流れて、二人がコミックを読み終えて……カニスが満足げな表情を浮かべる中、何故かクラウスは何とも言えない表情をして首を傾げる。
そんな態度が気になってユンボがどうかしたのか? と尋ねるとクラウスは首を傾げたまま言葉を返してくる。
「いや、すげぇ格好良いし、見てきたかのように描けているけどさ……ユンボはどうしてこのシーンを描けたんだ?
お前にこの時の話をしたことって無かったよな?」
マスティ氏族の領兵達をまとめる立場としてマスティ氏族のことをよく知っていて、よく知っているからこそ仲が良いクラウスは当然ユンボとも仲が良く……距離を感じない気安い態度でのその言葉にユンボは「ふふん」と鼻を鳴らしてから答えを返す。
「え? あの場にいて様子を見ていたから知っている?
嘘だろ? ユンボもあの場に居たのか? 戦っていたのか? お前戦いとか苦手だっただろう?
え? 見てただけ戦ってない? ユルトとか岩陰に隠れてただただ見てただけ?
……いやまぁ……うん、お前の仕事はコミック描きだから全然良いんだけどさ、あの場にいて見てただけってお前……」
そんなユンボに対しクラウスがそう返すとユンボは、両手を腰に当てて胸を張っての大威張りで言葉を続ける。
「戦えないのに恐怖に負けずにあの場に居続けた自分は偉いって?
……言われてみると確かにそうだなぁ、実際良いコミックを描けてる訳だし。
ただなんというか……本人に言われるとなんか釈然としないなぁ。
うぅん……まぁ、変に前に出てこられて怪我されても困るからお前はそんな態度でいるのが一番なのかもしれないな」
「まぁ、うん、ユンボ君は怪我しないのが一番だからねぇ」
クラウスとカニスにそう言われるとユンボはますます大きく胸を張り……そんなユンボを見てクラウスは苦笑をし、カニスは口元を隠しながらクスクスと笑い続けるのだった。
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