第61話 コミカライズ7巻 発売記念SS


 今回もまたユンボは逃げ回っていた。


 コミックの特典として相変わらずの絵を描き、当然のようにそれを予測していたアルナーに追いかけ回され……。


 だがユンボも当然そうなることを予測しており、逃亡のための準備を無駄にしっかりとしており、小麦粉を練って作った煙玉で視界を塞ぎ、香辛料を体に振りかけることで犬人族の鼻を使っての追跡を防ぎ、事前に掘っておいた地下通路を進むことでアルナーの追跡の手から逃れていた。


 最近はイルク村の外にも様々な施設が出来上がってきた。


 西側関所の予定地に迎賓館、食料保存庫に水源小屋。

 少し遠いが岩塩鉱床にも休憩所があるし、クラウス達がいる東側関所に行くという手もある。


 そのどれかに隠れてほとぼりが冷めるまで待てば、アルナーも忙しい身だ、いつまでも自分にばかりかまってもいられない。


 一日か二日か、そのくらい隠れていればそれで良いのだと、そう考えていた……のだが、イルク村を離れ迎賓館の辺りにまで逃げた所で、ユンボが予想もしていなかった事態が起きる。


「セナイ様とアイハン様のため、追撃の手を緩めるな!!」


 自らの痛む足を治してくれた、セナイとアイハンに対し絶対の忠誠を誓うモントが、領兵を動員までしてユンボのことを探し始めていたのだ。


 モントはユンボのことをよく知らない……だが長年の経験で逃亡兵をどう探すべきか、逃亡兵がどういった場所に潜むかということは熟知している。


 更に領兵達もまたディアスの下で、ディアスに振り回されながらも戦い抜いた猛者達で……まさかの追跡者達の存在にユンボの計画は破綻し、あっという間に追い詰められていってしまう。


 いくら逃げても、いくら頭をひねっても、モント達の経験と人数差によって追い詰められてしまって……そうしてユンボは仕方なしに、他に選択肢がないからと渋々……ある人物の下へと足を向ける。


 それはイルク村の中を歩き回っているアルナーであり……ユンボはモント達に捕まるくらいならとアルナーの下へ自首することに決めたのだった。


 アルナーとてユンボのことを嫌っている訳ではない。


 コミックを楽しんで読んでいるし、続きを楽しみにしてくれているし、コミック描きで忙しくしている時には世話をしてくれているし……ただそれはそれとして、お説教すべき所はしっかりする性格というだけのこと。


 自首し反省している態度を見せさえすればお説教だけで済ませてくれる。


 そう考えてユンボは地下通路を通った上でイルク村へと戻り、威風堂々とした足取りでアルナーの下へと向かい……土まみれとなった姿を咎められ、お説教と薬湯漬けという予想外の刑を受けることになってしまうのだった。

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