第59話 コミカライズ34話 公開予告SS


 今回のコミックの内容は森での冬備え。


 今は春で季節も景色も違うが、それでも何かの参考にはなるだろうと、ユンボは一人、森へと足を運んでいた。


 春らしい爽やかな風が吹き、陽の光がさんさんと降り注ぎ……そこかしこには切り株の姿があり、すっかりと手入れされた森はイルク村に来る際に通り過ぎた時とは全く違った姿を見せている。


 ……まぁ、これでも参考にはなる、雰囲気は伝わってくる。


 なんてことを考えながら切り株に腰を下ろしたユンボが絵筆を動かし、紙束に景色を描いていると……そこに見回りの犬人族達がやってくる。


 鼻をスンスンと鳴らしながら慣れた様子で周囲を見回し、ユンボの姿を見て軽く挨拶をしてきて……そしてまた見回りに戻って。


 よく見てみれば切り株やそこらに置いてある石、地面なんかに見回りの順番やルートを示す目印が刻んであったり、書いてあったりして……それを見てユンボは、見なかったことにしよう、無いものと思って景色を描こうと絵筆を走らせる。


 そうしていると今度は散歩でもしにきたのか、最近領民になったばかりの人間族達がやってきて……「やっぱり森は落ち着くなぁ」なんてことを言いながらそこらをウロウロとし始める。


 これはまさか……。


 その様子を見やりながらユンボがそんな予感を抱いていると、今度はよくもまぁここまでやってきたもんだと驚いてしまう老婆達の姿があり……今日もハチミツの採取に来たのかセナイとアイハンの姿があり、狩りをしに来たのかディアス達の姿があり……森の中をひっきりなしに人々が行き交う。


 そして人々が行き交う度にユンボの目に映る森の光景が、特別感のない、なんでもない光景に馴染んでいってしまって……ユンボは違う違う、こうではないと首を左右に振る。


 自分が見たかったのはもっと自然の、荒々しい姿で、こんな光景ではないのだと発奮し、立ち上がり……そうして森本来の景色を求めて森の奥へと足を運んでいく。


「おーい、そっちはモンスターがいて危ないぞー」


 そんなユンボを見て見回りの犬人族がそう声をかけるが、それでもユンボは奥へ奥へと足を進めていって……ズンズンと大股でその勢いそのままに、大きな何かを踏みつける。


 それはこの森では当たり前に見かける、当たり前に見かけるからこそ気をつけろと注意喚起がされていたモンスターで……そうしてユンボはそのモンスターからある攻撃を受けてしまうことになる。


 その攻撃はある種の幻覚を見せてくるというもので……それからユンボはしばらくの間、幻覚の中で理想の森の光景を見ることになり……結果としては望むものを得ることになるのだった。

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