第52話 コミカライズ29話 公開予告SS
それを見てユンボは硬直してしまっていた。
ウィンドドラゴンの群れを倒した際に見せたディアスの技……それを実際に見てみたいと頼んだ結果、見せられた衝撃的な光景。
途中までは、いやいや、こいつ何してんの? と思ってしまう光景であり、いざ技が発動したなら顎が外れてしまう程に大口をあけて驚いてしまう光景であり……全てが終わったら終わったで、あんなに遠くまで!? と愕然とする光景であり。
ディアスの馬鹿力だけでは説明出来ないような、その技をなんと表現したら良いのやら、ユンボは何も出来ずに硬直し続ける。
「ん? なんだ? いつもみたいに描きとりをしなくて良いのか?
それとも見逃してしまったか? それならもう一度やっても良いが」
そんなユンボを見て薄っすらと汗を浮かべてちょっとだけはしゃいでしまったな、なんて顔をしているディアスがそんなことを言ってきて……ユンボは慌てて首を左右に振ってその必要はないとディアスに知らせる。
「そうか? やろうと思えば何度でも出来ることだから遠慮はしなくて良いからな。
……しかしあれだな、その顔を見ているとなんだか昔を思い出してしまうな。
この技を思いついたというか、遊びでやっていた時に見た顔と言うか……クラウス達がよくそんな顔をしていたよ。
ジュウハはただ呆れるばっかりだったけどな」
するとディアスはそんなことを言ってきて……ユンボは、いや、そりゃそうだろと言わんばかりの真顔となる。
クラウスを含めたディアスの戦友達はこんな光景ばかりを見せられていたのかとか、戦争真っ最中の戦地でこんなことしていたのかとか、よくもまぁこんなことを遊びで始めやがったなとか、真顔のままそんなことを考えたユンボは……今見た光景を、目に焼き付いてしまっている光景を、手にした紙に描き写していく。
そうやってユンボが作業を始めたのを見て安心したのか、ディアスは戦斧を拾い上げに行き……肩に担いで戻ってきて、草原の中に座り込んで作業を進めるユンボの後ろに立つ。
後ろに立って覗き込んでユンボの作業の様子を眺めて……ディアスがそうしてくるのは今に始まったことではないので、慣れた様子でスルーするユンボ。
じぃっと視線が向けられても、暑苦しい気配が後ろから漂ってきても、相手をすることなく作業を続けて……そんなユンボのことを見やりながらディアスは「へー」「ほー」なんて声を上げる。
自分が一体どんな風に体を動かしているのか、どんな風に他人に見えているのか、客観的に見たことがないディアスにとってユンボの絵の中の自分はとても興味深いもので……そうしてディアスはそれからしばらくの間、ユンボの背後でそんな声を上げ続けて……ユンボの作業能率をがくんと落としてしまうのだった。
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