第42話 コミカライズ21話 公開予告SS



 ――――飼育小屋の側で ユンボ


 

 よく晴れて寒さが緩んだある日のこと。

 ユンボはコミックに登場することになるガチョウ達の姿を描くために、飼育小屋へと足を運んでいた。


 飼育小屋の周囲には寒さが入り込まないようにとメーア布が下げられていて……その扉は自由に出入り出来るようにと開け放たれていて、そんな小屋の中や周囲にはゆったりとくつろぐガチョウ達の姿がある。


 イルク村に来たばかりの頃はその警戒心からか落ち着かず、バッサバサと暴れてガーガーと鳴いて、結構な騒ぎっぷりを見せていたが……落ち着ける住処を与えられたからか、良い餌をたっぷりと与えられたからか……今ではすっかりとイルク村での生活に慣れて、ゆるみきった日々を送っている。


 世話係の犬人族達がやって来ても、卵を回収しようとアルナー達がやって来ても全くの無反応で……セナイとアイハンが生まれたばかりのひよこのことをそっと抱えたりしても、危害が加えられることはないと確信しているのか、微動だにしない。


 親鳥としてそれはどうなんだとも思うが……セナイとアイハンがひよこに何かをするなんてことはまず考えられないことなので、正しい判断ではあるのだろう。


 そんなガチョウ達はユンボが側にやってきても反応を見せず……飼育小屋の側に木箱を置いてみても、それを椅子にして座り込んでも同様で……やれやれと頭を振りながらユンボは、蓋を外したインク壺を木箱に起き、ペンをすっと構えて……ガチョウ達の姿を描いていく。


 するとどうしたことか、まるでユンボが何をしているのか理解しているとでも言わんばかりにガチョウ達が反応を示す。


 そこら辺に座ってだらけていたはずが、突然目をぱっちりと開き、すっと立ち上がり……羽を大きく広げ片足をぐいと上げて、まるでこの姿を描いてくれと言わんばかりのポーズと取り始めたのだ。


 それを見てユンボは、いきなり何だと驚きながらも、珍しいポーズではあるからとその姿を描き……そうしてから別の姿を描こうと他のガチョウへと視線をやる。


 するとそのガチョウもまたユンボに向けて同じポーズを取ってきて……ならば別のガチョウだと視線を移動させても結果は同じ、どこのガチョウを見ても、どんなガチョウを見てもまるで示し合わせたかのように、同じポーズを取ってくる。


 そうして奇妙なポーズを取るガチョウ達に周囲を囲われてしまったユンボは冷や汗をかきながら周囲を見渡して……下手なことをして怒らせてしまってそのクチバシで突かれても困ると、仕方なしにそんなガチョウ達の姿を描いていくのだった。

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