第17話 コミカライズ単行本1巻 特典告知SS



 隣領から、エルダンから届いた一冊の本。


 これはユンボが描いたコミックを読んだエルダンが、これは面白いと、これは売れると、コミックをまとめて一冊の本にしようと張り切って作ってしまったものだ。


 まさか私達を題材にしたコミックが本になるとはなぁ……。

 感慨深いというか、驚いてしまうというか……うぅむ。


 と、ユルトの中でなんとも言えない気分でその本を見つめていると、犬人族のユンボがタタタッと駆け込んで来て、そのままユルトの隅に置かれた荷物の陰へと飛び込み、そこで両手で頭を抱え込んで丸まって小さくなる。


 ……どうやらユンボはそうやって何かから隠れているつもりであるらしい。


 そんな風にして一体何者から逃げ隠れしているのかと訝しがっていると……その答えがユルトの中に飛び込んでくる。


 箒を強く握り持ち、肩を怒らせて、顔を真っ赤に染めたアルナーは、ユルトの中に駆け込んでくるなりユルトの中を見回して……そうして、ユンボのことを探し始める。


「……どうかしたのか?」


 そんなアルナーを見て、私が首を傾げながらそう言うと、アルナーは真っ赤な顔をこちらに向けて、言葉を探しているのか口をパクパクとさせて……そうしてから悲鳴に近いような声を上げる。


「ゆ、ユンボが! コミックの宣伝だとかいって、か、描いたあの絵!

 あ、あんな絵を……よ、よくも、よくも……!!!

 絶対に、絶対に許さん!!」


 宣伝の為に描いた絵? はて? そんなのあったかな? と、本が入っていた荷袋の中を探っていると、アルナーが私を止めようとして……その瞬間、そんなアルナーの隙をついて、荷物の陰に隠れていたユンボがダッと駆け出し、ユルトの外へと逃げていく。


 逃げ出したユンボに気付いたアルナーは、ユンボを追うか、私に何かを言うかしばしの間悩んで……そうしてから、


「探さなくて良い! 見なくて良い!!」


 と、そんな声を上げて、ユンボの後を追ってユルトの外へと駆けて行く。


 そんなアルナーの背を見送って……改めて袋の中を探ると、四枚の絵が出て来て……それを見た私は「あー……」となんとも言えない声を上げてしまう。


 扇情的というか、なんというか……そのどれもこれもが服をはだけさせたアルナーの絵で……これはアルナーが怒るのも納得だ。


 そうしてその絵を袋の中にしまい、口紐を固く結んだ私は、その袋をアルナーの私物入れの中にしまって……一人静かに呟く。


「ユンボ……当分は飯抜きの罰だろうな……」


 助けようにも庇おうにもこれは流石に無理というものだ。

 私に出来るのは少しでも早くユンボが赦されることを祈ることだけ。


 そうして私がユルトの中で一人祈っていると……イルク村の何処からかユンボの悲鳴が聞こえて来て、その悲鳴を聞いた私は一層深く一層強く、神に祈りを捧げるのだった。

 

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