第16話 コミカライズ5話 公開予告SS


 ある日の昼下がり。


 広場でコミックを描いているユンボが、なんとも珍しいことにうぅーん、うぅーんと唸り声を上げながらペンを空中に彷徨わせている姿が視界に入る。


 絵の上手いユンボでも描けないようなものでもあったのか、難しい描写でもあったのか、唸るユンボの後方からこっそり作成中のコミックの中身を覗き見てみると……そこには描きかけの絵があり、その絵を見て私はあぁ、なるほど、と納得する。


 そこに描かれていたのは、少し前に私……というか私達と揉めたというか衝突したというか、決定的に敵対した人物であり、どうやらユンボはその人物を描くことに対し乗り気になれないでいるらしかった。


 改めてユンボの周囲を見てみると、周囲の地面にはいくつもの試し描きのされたその人物の絵があり……その絵の人物の表情はどれもこれも、まるでモンスターかのように醜悪な顔となってしまっている。


 恐らくはそれがユンボの中のその人物の顔なのだろう、イメージなのだろう。


 しかし実際にはその人物は、もう少しというかなんというか、まともな顔をしていて……皆に見せるコミックであればそう描かなければならないのだが、しかしユンボとしては描きたくない、描けないと苦戦してしまっているようだ。


 なるほど、と事情を察し、そんなユンボに私が、一つ激励でもするかと声をかけようとした、その時だった。


 私と同様ユンボの様子を伺っていたらしいフランシスとフランソワが向こうから駆けてきて、ユンボのことを挟み込む。

 

 そうしてその毛でふわふわと、もこもことユンボを包み込み……どうやらフランシス達はそうやってユンボを激励しているらしい。


 ユンボはユンボでそれがまんざらでもないようで、フランシス達の中で明るい表情を取り戻していって……そしてやる気というか英気に満ちたユンボは凄い勢いでコミックに取り掛かり、ペンを走らせていく。


 そんなユンボを満足気に眺めたフランシス達は、フンスと鼻息を一つ吐いて、どうだと言わんばかりの表情を見せつけてくる。



 そんなフランシス達の表情に、私はなんとも言えない表情になりながらも、コミックの完成が楽しみだと、ものすごい勢いでペンを走らせ続けるユンボの姿を眺め続けるのだった。



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