第10話 コミカライズ2話公開予告SS


 ある日の朝食後、広場で何やらポーズを取っているフランシスの姿が視界に入る。

 角を突き上げてみたり、前足を振り上げてみたり、何かを食む真似をしたり……とそんな具合だ。


 そうするフランシスの側には紙にペンを走らせているユンボの姿があり……どうやらユンボはそうやってフランシスの様々な姿を描く練習をしているようだ。


 フランシスは自分の姿が絵になるのが余程に嬉しいのかとても協力的で……なんとも楽しげにポーズを取っている。



 そんなユンボの練習は昼過ぎになるまで続けられて……疲れてしまったのかぐったりと横たわるフランシスをそのままに、ユンボは一直線に私の方へと駆けてくる。


「……どうした? 何か用か?」


 私がそう声をかけると、ユンボは私の姿を描く練習をしたい……と、そんなことを言ってくる。

 戦斧を持って構えて、戦う私の姿がぜひ見たい……とのことだ。


 ……まぁ、うん、フランシスも頑張っていたみたいだし……私も頑張るが……。

 程々に、程々にしてくれよ……?



 それから私はユンボの指示に従い、戦斧を構えたり、振り下ろしたり、あるいは横薙ぎに払ったりと様々なポーズを取ることになった。


 ただそうするだけならそんなに大変でも無かったのだが……途中で動きを止めて欲しいとか、そのまましばらく動かないで欲しいとか、状況に合わせた良い感じの表情をして欲しいとか言われてしまった時には困ってしまった。


 ユンボのコミックはイルク村の皆が楽しみにしているから、協力したいのは山々なのだが……戦斧を空中で制止させたまま、良い表情で居続けるというのは中々難しいものがあるぞ……?


 それでもユンボは容赦なく私にあれこれと要求し続けて……そうして私が解放されたのは夕刻過ぎのことだった。


 ……いや、うん、フランシスがぐったりと横たわりたくなる気持ちも分かるな、これは。


 たくさんの絵を描いてユンボも相応に疲れているであろうはずなのだが……しかしユンボは疲れなんてどこ吹く風といった様子で、次の練習だとアルナーの下に駆けていく。


 そしてアルナーにも絵の練習を! と要求するユンボだったが……今は家事で忙しいからとアルナーは全く相手にしない。

 それでもユンボは諦めず、アルナーの側で勝手に絵の練習をし始めて……村中を駆け回るアルナーの後を追いながら絵を描き続ける。


 いやはや全く……凄まじい熱意だなぁ。


 コミックの続きはそろそろ出来上がるという話だったが……一体どんな話になるのだろうなぁ。




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