第33話 桜の特別警護隊

信長の小姓が連れて来たのは

三人の若武者であった。

いずれも年の頃は15歳ほどであったが、

蒼紫はその所作から相応の腕前があると

理解した。


「その方らにはこれより特別な任務についてもらう。そち達も名前くらいは既に聞いたであろう。

この者は元今川義元の家臣であった真田蒼紫じゃ。昨日より我が家臣となったが、お主たちはこの真田と共に一時的に、良策を考えるまでは、

この桜を守るのが役目じゃ。

この蒼紫の配下として、桜を守るのが何よりも大事だと心得よ」


「分かりましてございまする。守ると言う事は、

狙われていると考えて相違ございませぬか?」

縁側の外に片膝をついている一人が確認した。

「そうじゃ、恒興。この娘は夢母衣衆の事まで知っておった。今川家にはまだ居らぬそうじゃが、

夢母衣衆のような者達は日ノ本の北から南までに

数百人はおるそうな」


その言葉で池田恒興は厳しい顏になった。


「その娘を狙っているのは義元ですか?」

あまり難しく考える事が苦手ではあるが、

的確な意見を言う森可成は言葉を発した。


「義元と言うよりは雪斎が狙ってこよう。

どうやらあの者は不老長寿らしい。

会話からして義元も不老長寿のようだが、

不老不死の事も話していたらしい。

義元は雪斎の策によって、

北の武田と東の北条と三国同盟を結んだ。

表向きは京の都の再建目的の為に京を目指すが、

本来の目当は、古の書庫にあると余は見ておる。

義元は最近京かぶれになったように、

歳を誤魔化す為に、化粧で誤魔化している事も

納得できる」


皆が静まり返ったが、一人の男が口を開いた。

「この清州城にまで乗り込んでくると考える

べきなのでございますね。話からして相当

厄介な娘のようですが、守る価値も十分に

あると理解しました」

毛利新介は己に課せられた使命を再確認した。


「いずれの者も武に長けた者達じゃ。

義元と言えど、簡単に手出しは出来ぬはずよ。

蒼紫よ、恒興は攻防にも長けており、

良き相談役にもなるであろう。

そこの新介と可成は両人ともに武に優れておる」

信長は簡単に紹介をした。


「蒼紫の屋敷の外壁と外門と内門にも

既に総勢100名の兵士は配備済じゃ。

敵は忍びの者故、そちたちもくれぐれも

気をつけよ。可成は新介と共に蒼紫の屋敷に

行き、不備が無いか確認せよ。恒興はまた

後ほど蒼紫と桜と共に行かせる」


そう言うと信長は奥の間へと入って行き、

蒼紫と桜を小姓によって呼びつけられた。


奥の部屋には信長が正妻である帰蝶に

食事のようにさせるよう言いつけた。


「では桜よ。詳細を余にも教えてほしい」










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